説明

理論粗さとは(理論表面粗さ・最大高さ Rz)

刃先の丸みと送りだけで決まる、削った面の山の高さです。

理論粗さの決まり

京セラの「R 技術資料」(R7 表面粗さ)は「旋削加工における理論表面粗さとは、設定切削条件で得られる最小の値であり、次式で表すことができます。」として、Rz(h) = f² ÷ 8RE × 10³ を示しています。

呼び方は資料ごとに違います。三菱マテリアルは「理論仕上げ面あらさ」、住友電工ハードメタルは「理論(幾何学的)表面粗さ」(同じページで「理論粗さ」とも)、タンガロイは「仕上面粗さ(理論値)」と書いています。どれも同じ式で求める、同じ値です。

送りの跡にできる山

旋削では、インサートのコーナ半径の円弧が被削材の面に写ります。被削材が1回転するとバイトは送り f だけ進むので、円弧の跡が f の間隔で並び、隣り合う円弧の間に山が残ります。この山の高さが理論粗さ h です。

fhRE
f: 送り・h: 理論粗さ・RE: コーナ半径(縦を大きく描いた図)

三菱マテリアルの「コーナ半径」の図では、コーナ半径のあるインサートの跡は円弧の山、コーナ半径の無いとがった刃先の跡はのこぎりの歯の形で描かれています。理論粗さの式は円弧の山の高さの式なので、刃先にコーナ半径があることが前提です。

記号 h と RE・旧い記号

京セラの「R 技術資料」(R6 切削記号)は、切削条件の記号を変えたことを表にしています。理論表面粗さは h(旧い記号は Rz)、コーナ半径は RE(旧い記号は R)、送り量は f(mm/rev)です。旧い記号で書くと、同じ式は Rz = f² ÷(8 × R)× 1000 になります。

最大高さ Rz の理論値

理論粗さは、山の頂から円弧の底までの高さで、最大高さの理論値です。奈良工業高等専門学校の研究紀要(和田・中西)も「仕上げ面粗さの理論値(最大高さ R z)」と書いています。

京セラ R7 の決まりでは、最大高さ Rz は「粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定し、この値をマイクロメートル(μm)で表したもの」です。図面に Ra(算術平均粗さ)で書かれた粗さとは別の数です(表面粗さの記号 Ra・Rz と三角記号の関係)。

実際の面は理論粗さより粗い

理論粗さは、刃先の形と送りだけから求める幾何学的な値です。住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンスは、実際の表面粗さを「鋼の場合:理論粗さ× 1.5 ~ 3 倍」「鋳鉄の場合:理論粗さ× 3 ~ 5 倍」としています。三菱マテリアルの例題の 6.25 μm なら、鋼で 9.38〜18.75 μm、鋳鉄で 18.75〜31.25 μm が目安です。

理論粗さを使う所

三菱マテリアルの技術資料「旋削加工の切削条件による影響」は「送りは、仕上げ面粗さと大きな関係があり、要求される仕上げ面粗さによって決定される場合がほとんどです。」としています。理論粗さの式は、図面の粗さに合わせて仕上げの送りとコーナ半径を決めるときの、最初の見当に使います(面粗さから送りを決める(送りの逆算と例))。

技術資料には「面粗さ」(京セラのワイパーチップの説明)、「面粗度」(住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンス)の字も使われています。どれも面の粗さのことです。

出典

理論粗さを計算する