狙いの理論粗さとコーナ半径から、送りを逆算する式と例です。
送りは面粗さで決まる
三菱マテリアルの技術資料「旋削加工の切削条件による影響」は「送りは、仕上げ面粗さと大きな関係があり、要求される仕上げ面粗さによって決定される場合がほとんどです。」としています。理論粗さの式を送り f について解くと、狙いの理論粗さになる送りが求められます。
h は狙いの理論粗さ(μm)、RE はコーナ半径(mm)です。計算の画面の「求めるもの」を「送り」にすると、この式で送りを計算します。
計算の例
三菱マテリアルの例題を逆にたどると、狙い 6.25 μm・コーナ半径 0.8 mm の送りは √(8 × 0.8 × 6.25 ÷ 1000)= √0.04 = 0.200 mm/rev で、例題の送り 0.2 mm/rev に戻ります。
狙いを 3.2 μm にすると、√(8 × 0.8 × 3.2 ÷ 1000)= 0.14311… なので、送りは 0.143 mm/rev、その送りの理論粗さは 3.195 μm です。
送りは切り捨てる
送りは 0.001 mm/rev に切り捨てます(切り上げると、狙いの理論粗さを少し超えるため)。上の例で 0.144 mm/rev に切り上げると、理論粗さは 3.240 μm になり、狙いの 3.2 μm を超えます。
狙いの理論粗さごとの送り
狙いの理論粗さには、京セラと住友電工ハードメタルの表面粗さの表に並ぶ、最大高さ Rz の区分値を使いました(送りは 0.001 mm/rev に切り捨て)。
| 狙いの理論粗さ | RE 0.4 mm | RE 0.8 mm | RE 1.2 mm |
|---|---|---|---|
| 1.6 μm | 0.071 mm/rev | 0.101 mm/rev | 0.123 mm/rev |
| 3.2 μm | 0.101 mm/rev | 0.143 mm/rev | 0.175 mm/rev |
| 6.3 μm | 0.141 mm/rev | 0.200 mm/rev | 0.245 mm/rev |
| 12.5 μm | 0.200 mm/rev | 0.282 mm/rev | 0.346 mm/rev |
| 25 μm | 0.282 mm/rev コーナ半径が送りの2倍より小さい | 0.400 mm/rev | 0.489 mm/rev |
同じ狙いなら、コーナ半径が大きいほど送りを上げられます。コーナ半径を2倍にすると、送りは √2 倍(約1.41倍)になります。
実際の粗さを見込む
図面の粗さは、実際に削った面の粗さです。住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンスは、実際の表面粗さを「鋼の場合:理論粗さ× 1.5 ~ 3 倍」「鋳鉄の場合:理論粗さ× 3 ~ 5 倍」としています。
鋼で最大高さ 6.3 μm に収めたいとき、この倍率で割ると理論粗さは 6.3 ÷ 3 = 2.10 μm から 6.3 ÷ 1.5 = 4.20 μm です。コーナ半径 0.8 mm なら、送りは 0.115 mm/rev から 0.163 mm/rev です。理論粗さの3倍まで粗くなっても収めるなら、小さい側の 0.115 mm/rev です。倍率は目安なので、削った面は測って確かめてください。
送りを下げすぎない
三菱マテリアルの同じ資料は、送りによる影響として「送りを小さくすると逃げ面摩耗が大きくなり工具寿命が極端に短くなる。」「送りを大きくすると加工能率は向上する。」を挙げています。奈良高専の研究紀要も「送りを低くすると,作業能率の低下や切りくずが薄く柔軟になるため切りくず処理性が低下する」「コーナ半径を大きくすれば高送りで切削することができる」としています。
狙い 6.3 μm の送りは、コーナ半径 0.4 mm で 0.141 mm/rev、0.8 mm で 0.200 mm/rev、1.2 mm で 0.245 mm/rev です。送りを下げる前に、コーナ半径の大きいインサートを使えるかを見ます(コーナ半径(ノーズR)と仕上げ面粗さ)。
ワイパーインサートのとき
京セラの「R 技術資料」(R34)は「ワイパーチップとは、…コーナ R と直線切れ刃の間に仕上げ切れ刃(ワイパー刃)を設けたチップです」とし、効果に「通常チップ形状に対し、送りを上げても面粗さが向上」を挙げています。住友電工ハードメタルの仕上げ面粗さ向上方法にも「ワイパーインサートの使用」があります。
理論粗さの式は、コーナ半径の円弧だけが面に写るときの式です。ワイパーインサートの面粗さは、この式では計算できません。工具メーカーの資料で確かめてください。