説明

理論粗さの式の導出(円弧の山の高さから)

隣り合う刃先の円弧が交わる所の高さから、式を導きます。

どこの高さを求めるか

半径 RE の円弧(インサートのコーナ)が、被削材の1回転ごとに送り f だけずれて面を削ります。隣り合う2つの円弧が交わる所が山の頂で、円弧のいちばん深い所(底)から山の頂までの高さが理論粗さ h です。

fhRE
円弧の底から山の頂までが h・隣り合う山の間隔が f(縦を大きく描いた図)

三平方の定理で式を立てる

円弧の中心から底までは RE です。山の頂は、底から横に f ÷ 2、上に h の所にあり、同じ円弧の上の点なので、中心からの距離も RE です。中心から山の頂までの縦の長さは RE − h なので、次の式が成り立ちます。

(RE − h)² +(f ÷ 2)² = RE²

これを h について解くと、近似しない形の式になります。

h = RE − √(RE² −(f ÷ 2)²)

h² を落として f² ÷ 8RE にする

(RE − h)² を開くと RE² − 2 × RE × h + h² なので、式は 2 × RE × h =(f ÷ 2)² + h² になります。h は RE に比べてとても小さい(例題では h = 0.00625 mm、RE = 0.8 mm)ので、h² を落とすと次の式になります。

h = f² ÷(8 × RE)

これに mm を μm に直す × 1000 を付けたのが、理論粗さの式 h = f² ÷(8 × RE)× 1000 です。奈良工業高等専門学校の研究紀要(和田・中西)は「刃部にコーナ半径rを有する片刃バイト(横切れ刃角 0°)を用い,2 rより低い送り S で旋削した場合,仕上げ面粗さの理論値(最大高さ R z)は,S²/(8r) で近似できる」としています。

近似しない形との差

送りがコーナ半径に比べて小さいほど、2つの式の差は小さくなります(差は近似しない形に対する割合)。

条件近似しない形理論粗さの式差
RE 0.8 mm・f 0.2 mm/rev6.27 μm6.25 μm0.4%
RE 0.8 mm・f 0.4 mm/rev25.40 μm25.00 μm1.6%
RE 0.4 mm・f 0.3 mm/rev29.19 μm28.13 μm3.6%
RE 0.4 mm・f 0.6 mm/rev135.42 μm112.50 μm16.9%
RE 0.4 mm・f 0.8 mm/rev400.00 μm200.00 μm50.0%

例題の条件(RE 0.8 mm・送り 0.2 mm/rev)では、近似しない形が 6.27 μm、式が 6.25 μm で、差は 0.4% です。送りがコーナ半径のちょうど2倍(RE 0.4 mm・送り 0.8 mm/rev)では、近似しない形の 400.00 μm に対して、式は 200.00 μm で半分になります。

計算の画面は、各社の技術資料と同じ式(近似した形)で計算します。近似しない形は、式の成り立ちを説明するための物です。

送りがコーナ半径の2倍以上のとき

中心が f だけ離れた半径 RE の2つの円は、f が 2RE のとき1点で接し、それより離れると交わりません。そのときの面の形は刃先の円弧だけでは決まらず、直線の切れ刃が面に写ります。このアプリは、奈良高専の研究紀要の「2 rより低い送り」に合わせて、送りがコーナ半径の2倍以上のときは理論粗さを計算しません。

出典

理論粗さを計算する