実際の面が理論粗さより粗くなる目安と、その原因・対策です。
実際の粗さの目安
住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンスは、実際の表面粗さを「鋼の場合:理論粗さ× 1.5 ~ 3 倍」「鋳鉄の場合:理論粗さ× 3 ~ 5 倍」としています。理論粗さに、この倍率を掛けた幅です(単位は μm)。
| 条件 | 理論粗さ | 鋼(1.5〜3倍) | 鋳鉄(3〜5倍) |
|---|---|---|---|
| f 0.1 mm/rev・RE 0.8 mm | 1.56 | 2.34〜4.69 | 4.69〜7.81 |
| f 0.1 mm/rev・RE 0.4 mm | 3.13 | 4.69〜9.38 | 9.38〜15.63 |
| f 0.2 mm/rev・RE 0.8 mm | 6.25 | 9.38〜18.75 | 18.75〜31.25 |
| f 0.2 mm/rev・RE 0.4 mm | 12.50 | 18.75〜37.50 | 37.50〜62.50 |
計算の画面でも、理論粗さの下に同じ倍率の幅を「実際の粗さの目安」として表示しています。
理論粗さは最小の値
京セラの「R 技術資料」(R7)は、理論表面粗さを「設定切削条件で得られる最小の値」としています。三菱マテリアルの「コーナ半径」のページには、SNCM439(200HB)を材種 P20、切削速度 120 m/min、切込み 0.5 mm で削ったときの、コーナ半径と仕上げ面粗さのグラフがあります。
このグラフでいちばん小さい送り 0.075 mm/rev の理論粗さは、コーナ半径 0.4 mm で 1.76 μm、2.0 mm で 0.35 μm ですが、グラフのこの送りの仕上げ面粗さは、どのコーナ半径でも、理論粗さよりずっと大きな値です。送りを小さくしても、実際の面は理論粗さほどは細かくなりません。
粗くなる原因
京セラの「R 技術資料」のトラブルシューティング(R39)は、「仕上げ面粗さが要求面粗さより劣る」の要因に、「工具摩耗大による切れ味低下」「切れ刃のチッピング」「溶着・構成刃先」「切削条件が不適切」「工具・切れ刃形状が不適切」「振動・びびり」を並べています。工具の損傷とその対策(R38)のうち、現象に仕上げ面のことが書かれている物は次のとおりです。
| 損傷 | 現象 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 先端摩耗(二次境界摩耗) | 仕上げ面粗さ、寸法精度に影響 | 切削速度が高い・工具としての寿命 | 切削速度を下げる・耐摩耗性の良い材種に変更する |
| クレータ摩耗 | 切りくず処理が劣化する・仕上げ面が劣化する(毛羽立ち) | 切削速度が高い | 切削速度を下げる・サーメット又はAl2O3コーティングの高速タイプに変更する |
| 摩耗性の欠け | 仕上げ面が急激に劣化する・寸法が外れる | 切削速度が高い | 工具寿命設定値の短縮・耐摩耗性の良い材種に変更する |
| チッピング | 切削抵抗の増加・仕上げ面粗さが劣る | 送りが高い・切削時のびびり・チップ材種の靭性不足 | 送り、切込みを下げる・ホルダの剛性アップ・靭性の高い材種に変更する |
| 溶着・構成刃先による欠け | 仕上げ面が劣化する・切削抵抗の増加 | 切削速度が低い | 切削速度を上げる・切れ味(すくい角、チャンファ)を良くする |
切削速度と構成刃先
上の表のとおり、溶着・構成刃先による欠けの原因は「切削速度が低い」、対策は「切削速度を上げる」です。三菱マテリアルの「旋削加工の切削条件による影響」も「切削速度が低い(20─40m/min)低速度側でもびびり振動が発生しやすく、工具寿命は短くなる。」としています。一方で、先端摩耗・クレータ摩耗・摩耗性の欠けの原因は「切削速度が高い」で、切削速度は高すぎても低すぎても面が荒れます。
仕上げ面粗さを向上させる方法
住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンス(N18)は、仕上げ面粗さ向上方法として次の4つを挙げています。
- コーナー半径を大きくする
- 切削速度や送り量の適正化(構成刃先の発生しない条件にする)
- インサート材種の適正化
- ワイパーインサートの使用
1 のコーナー半径と、2 のうちの送りは、理論粗さの式で効き方が分かります(コーナ半径(ノーズR)と仕上げ面粗さ・面粗さから送りを決める(送りの逆算と例))。2 の切削速度、3 の材種、4 のワイパーインサートは、理論粗さの式には含まれない、実際の面のための対策です。