送りとコーナ半径から理論粗さを求める式と、三菱マテリアルの例題です。
理論粗さの式
三菱マテリアルの技術情報「旋削加工の計算式」は、旋削の理論仕上げ面あらさ h を次の式で求めています。
- h(μm): 理論仕上げ面粗さ(理論粗さ)
- f(mm/rev): 1回転当たりの送り
- RE(mm): インサートのコーナ半径
f と RE は mm の数なので、f² ÷(8 × RE)は mm の長さです。終わりの × 1000 で、mm を μm に直しています。
同じ式は、京セラの切削工具 総合カタログ「R 技術資料」の計算式(R42)に Rz(h) = f² ÷(8 × RE)× 1,000、住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンス(N18)に h = f² ÷(8 × RE)× 10³、タンガロイのユーザーズガイド(L005)に h = f² ÷(8 × r)× 1000 として載っています。タンガロイの r はコーナ半径で、カタログ本文の記号では RE です。
例題(コーナ半径 0.8 mm・送り 0.2 mm/rev)
三菱マテリアルの例題は「インサートの刃先コーナ半径0.8mm、送り0.2mm/revのとき理論仕上げ面粗さを求める」です。
- f² = 0.2 × 0.2 = 0.04
- 8 × RE = 8 × 0.8 = 6.4
- 0.04 ÷ 6.4 = 0.00625 mm
- 0.00625 × 1000 = 6.25 μm
資料の計算結果も 6.25 μm で、「理論仕上げ面あらさは約6μmとなります」としています。計算の画面に送り 0.2 mm/rev とコーナ半径 0.8 mm を入力すると、同じ 6.25 μm が表示されます。
送りとコーナ半径ごとの理論粗さ
同じ式で計算した理論粗さです(単位は μm・0.01 μm に四捨五入)。
| 送り f | RE 0.4 mm | RE 0.8 mm | RE 1.2 mm | RE 1.6 mm |
|---|---|---|---|---|
| 0.05 mm/rev | 0.78 | 0.39 | 0.26 | 0.20 |
| 0.1 mm/rev | 3.13 | 1.56 | 1.04 | 0.78 |
| 0.15 mm/rev | 7.03 | 3.52 | 2.34 | 1.76 |
| 0.2 mm/rev | 12.50 | 6.25 | 4.17 | 3.13 |
| 0.25 mm/rev | 19.53 | 9.77 | 6.51 | 4.88 |
| 0.3 mm/rev | 28.13 | 14.06 | 9.38 | 7.03 |
送りを半分にすると理論粗さは4分の1(コーナ半径 0.8 mm で送り 0.2 → 0.1 mm/rev なら 6.25 → 1.56 μm)、コーナ半径を2倍にすると半分(送り 0.2 mm/rev でコーナ半径 0.4 → 0.8 mm なら 12.50 → 6.25 μm)になります。式の中で、送りは2乗で効き、コーナ半径は割る数だからです。
表のうち、コーナ半径 0.4 mm で送り 0.25・0.3 mm/rev は、コーナ半径が送りの2倍より小さい組です。三菱マテリアルの技術資料は「コーナ半径は刃先の強度と仕上げ面粗さに非常に影響します。一般的には送りの2~3倍が適当です。」としています。
送りの単位に気をつける
式の f は1回転当たりの送り(mm/rev)です。1分間当たりの切削長さ(mm/min)しか分からないときは、主軸回転速度(min⁻¹)で割って直します。三菱マテリアルの同じページの例題は、主軸回転速度 500 min⁻¹・1分間の切削長さ 120 mm/min で f = 120 ÷ 500 = 0.24 mm/rev です。
この送りをコーナ半径 0.8 mm のインサートで使うと、理論粗さは 0.24² ÷(8 × 0.8)× 1000 = 9.00 μm です。mm/min の数のまま式に代入すると、まったく違う数になります。
使い方
- 「求めるもの」で「理論粗さ」を選びます(狙いの理論粗さから送りを求めるときは「送り」)。
- 送り f(mm/rev)と、インサートのコーナ半径 RE(mm)を入力します。コーナ半径は、カタログの寸法の表の RE の値です。
- 理論粗さ h(μm)と、実際の粗さの目安(鋼・鋳鉄)が表示されます。式と途中の数は「計算の内訳」で見られます。
- 送りがコーナ半径の2倍以上のときは、式の範囲の外なので計算結果を表示しません。コーナ半径が送りの2倍より小さいときは、注意の1行を表示します。
よくある質問
理論粗さは Ra ですか、Rz ですか
最大高さ(Rz)の理論値です。京セラの技術資料は記号を Rz(h) と書いています。図面の Ra と比べるときは、表面粗さの記号 Ra・Rz と三角記号の関係を見てください。
計算した粗さと、測った粗さが合いません
京セラの技術資料は、理論表面粗さを「設定切削条件で得られる最小の値」としています。住友電工ハードメタルのテクニカルガイダンスは、実際の表面粗さを鋼で理論粗さの1.5〜3倍、鋳鉄で3〜5倍としています(実際の粗さのページ)。
ほかの加工にも使えますか
この式は、三菱マテリアル・京セラ・住友電工ハードメタル・タンガロイの技術資料に、旋削加工の計算式として載っている物です。京セラの資料の計算式のうち、ミーリング編(R44)には理論表面粗さの式は載っていません。このアプリは、旋削の理論粗さとして計算します。
出典
- 三菱マテリアル 技術情報「旋削加工の計算式」(理論仕上げ面あらさ(h)・例題)
- 京セラ 切削工具 総合カタログ「R 技術資料」(R2 寸法記号・R6 切削記号・R7 表面粗さ・R34 ワイパーチップ・R38〜R39 トラブルシューティング・R42・R44 計算式)
- 住友電工ハードメタル 総合カタログ「テクニカルガイダンス」(N18 旋削加工の基礎・N21 切りくず処理・N48 表面粗さ)
- タンガロイ 総合カタログ 2023-2024「ユーザーズガイド」(L003 バイトの名称・L005 旋削加工の計算式・L012 ノーズ R の補正)
- 三菱マテリアル 技術情報「コーナ半径」(旋削工具 技術資料)