力率を改善すると、皮相電力・電流・電圧降下が小さくなります。
農林水産省 電気設備 設計指針は、力率改善の目的を次の3つとしています(2.5.1)。
- 電力損失の低減: 力率を改善すると線路を流れる電流が減少するので、線路損失が軽減されるとともに、変圧器の損失(銅損)も減少する。線路損失・変圧器の容量が減少し、設備容量に対して経済性を図ることができる。
- 電圧降下の改善: 線路を流れる電流が減少することにより、線路の電圧降下も小さくなり、安定的な電力供給ができる。
- 電気料金の割引: 力率が改善された分について電気料金の割引がある(「力率改善の目標と力率割引」の話題)。
皮相電力の減り方
有効電力が同じなら、皮相電力 S = P ÷ cosθ は力率に反比例します。三相の皮相電力は √3 × 電圧 × 電流 なので、電圧が同じなら電流も皮相電力と同じ割合で減ります。負荷入力 150 kW を 0.85 から 0.95 に改善すると、皮相電力は 176.47 kVA から 157.89 kVA になり、10.5 % 減ります(0.85 ÷ 0.95 = 0.8947 倍)。
変圧器の容量に余裕ができる(第三種電気主任技術者 電力 問13)
令和7年度下期の電力 問13 は、定格容量 200 kV・A の変圧器に出力 120 kW・遅れ力率 0.6 の負荷が接続されている問題です(このとき皮相電力は 120 ÷ 0.6 = 200 kV・A で、定格いっぱいです)。この負荷と並列に遅れ力率 0.6 の負荷を増設すると共に、進相コンデンサを接続して力率を 0.8 に改善します。
- 力率 0.8 なら、200 kV・A の変圧器で 200 × 0.8 = 160 kW まで供給できる。
- 増設できる負荷は 160 − 120 = 40 kW、その皮相電力は 40 ÷ 0.6 ≒ 66.7 kV・A(正答 (3))。
計算の画面に有効電力 160 kW・改善前の力率 60 %・目標の力率 80 % を入力すると、必要なコンデンサの容量 93.3 kvar、改善前の皮相電力 267 kVA、改善後の皮相電力 200 kVA(変圧器の定格容量と同じ)を表示します。力率を改善すると、同じ変圧器で多くの有効電力を供給できます。
電圧降下が小さくなる(第三種電気主任技術者 法規 問11)
令和6年度上期の法規 問11 は、電線 1 条当たりの抵抗 3 Ω・リアクタンス 5 Ω の三相 3 線式の専用配電線で、使用電力 8,000 kW・遅れ力率 0.8 の需要家が受電電圧 20 kV で受電している問題です。電圧降下を(有効電力 × 抵抗 + 無効電力 × リアクタンス)÷ 受電電圧 で求めると、次のとおりです。
- (a) 改善前の無効電力は 6,000 kvar、電圧降下は(8,000 × 3 + 6,000 × 5)÷ 20 = 2,700 V。変電所引出口の電圧は 20 + 2.7 = 22.7 kV(正答 (3))。
- (b) 力率を 0.95 に改善すると、無効電力は 2,630 kvar、電圧降下は 1,857.4 V で、改善前の 68.8 %(正答 (2) 68.8)。
このときコンデンサが受け持つ無効電力は 3,370 kvar です。計算の画面に 8000 kW・80 %・95 % を入力すると同じ値を表示します。