変圧器の全損失を、無負荷損・負荷損と負荷率から求める式です。
変圧器が運転中に発生する損失には、無負荷損と負荷損があります(三菱電機 配電用油入変圧器 総合カタログ)。無負荷損は、変圧器に電圧を加える(励磁する)ことで、負荷の大きさに関係なく鉄心から生じる損失です。負荷損は、変圧器に電流が流れる(負荷をとる)ことで主にコイルから生じる損失で、負荷の大きさの2乗に比例します。2つを合わせた物が全損失です。
計算式
カタログの式の Pe は等価負荷率です。負荷が一定なら負荷率そのもの、時間で変わるなら時間ごとの負荷率から求めた等価負荷率を使います(等価負荷率の計算式の話題)。環境省の温室効果ガス排出削減等指針「変圧器設備容量の適正化」も、全損失を 無負荷損 + 定格負荷時負荷損 ×(負荷率 ÷ 100)² とし、これに年間運転時間を掛けて全損失の年間累積値を求めています。
例(三菱電機のカタログの計算例)
カタログの省エネ計算例は、約30年前の三相 1000 kVA 60 Hz 油入変圧器を、EX-α シリーズと EX-β シリーズに更新した場合の、負荷率 50 % における全損失です。
カタログは全損失を W の整数で書いています(4665 W・1833 W・2263 W)。計算の画面も全損失を W の整数(小数1桁目を四捨五入)で表示し、「計算の内訳」に小数を表示します。
負荷率と全損失
無負荷損は負荷率が 0 % でも同じだけ生じ、負荷損は負荷率の2乗で増えます。負荷率が半分になると負荷損は4分の1です。カタログの計算例の2台で比べます。
| 負荷率 | 約30年前の変圧器 | EX-α シリーズ |
|---|---|---|
| 0 % | 1,880 W | 390 W |
| 25 % | 2,576 W | 751 W |
| 50 % | 4,665 W | 1,833 W |
| 75 % | 8,146 W | 3,636 W |
| 100 % | 13,020 W | 6,160 W |
表の計算の列は、計算の画面と同じ計算でこのページを作るときに求めた値です。
カタログの代表値の表と比べる
カタログの特性[代表値]の表には、無負荷損・負荷損・全損失と、エネルギー消費効率(W)が並んでいます。表の全損失は無負荷損と負荷損の合計(負荷率 100 %)で、エネルギー消費効率は「500kVA以下を負荷率40%、500kVA超過を50%とする基準負荷率における全損失」です(同じ表の注2)。三相 6 kV-210 V の表(50 Hz)から5行を上の式で計算すると、表のエネルギー消費効率と同じ値になります。
| 容量(基準負荷率) | 式で求めた値 | 表の値 |
|---|---|---|
| 75 kVA(40 %) 無負荷損 54 W・負荷損 980 W | 211 W | 211 W |
| 300 kVA(40 %) 無負荷損 150 W・負荷損 2,550 W | 558 W | 558 W |
| 500 kVA(40 %) 無負荷損 210 W・負荷損 3,980 W | 847 W | 847 W |
| 1,000 kVA(50 %) 無負荷損 365 W・負荷損 6,070 W | 1,883 W | 1,883 W |
| 2,000 kVA(50 %) 無負荷損 575 W・負荷損 12,900 W | 3,800 W | 3,800 W |
表の計算の列は、計算の画面と同じ計算でこのページを作るときに求めた値です。
負荷損は電流の2乗に比例する(試験の例)
第三種電気主任技術者試験の令和4年度下期の機械(問8)は、単相変圧器の全損失が、二次電圧 200 V・二次電流 250 A のとき 1,525 W、二次電流 150 A のとき 1,125 W であるときの無負荷損を問うています。無負荷損は電流に関係なく同じで、負荷損は電流の2乗に比例するので、差の 400 W は 250² − 150² = 40,000 に比例する分です。1 A² あたり 0.01 W なので、250 A の負荷損は 625 W、無負荷損は 1,525 − 625 = 900 Wで、正答と同じです。
同じ試験の機械(問9)は、誤っている記述を選ぶ問題で「無負荷損の主なものは鉄損で,電圧と周波数が一定であれば負荷に関係なく一定である。また,負荷損の主なものは銅損で,負荷電流の 2 乗に比例する。」を含む選択肢を正しい記述としています(正答は別の選択肢)。