現場マスター

配管の切寸法と振りの計算

継手の芯引き(芯から受口の奥まで)を引いて、管を何mmで切るか(切寸法・切り寸法)を出します。継手は DV・TS・HT の塩ビ、白ねじ(ねじ込み)、溶接(突合せ)の5系統です。45°エルボで振るときは、斜辺(芯々)と送りから切寸法を出します。引き算の答えが正の数でも、受口が重なって入らない寸法は数字を出さずに「入りません」と言い、入る組合せを先に出します。

切寸法を出す(直管1本)

測り方

同梱の継手はメーカーの公表値です。手元の物と違うときは、iPhone アプリ(Pro)で測って登録すると、以後その値で計算します。

振りを出す(45°エルボなど)

送りは、振っている間に元の向きへ進む長さです。入力しておくと、その長さに収まらない組合せを先に表示します。

22.5°・11.25° の継手は、公表の寸法が入手できないので同梱していません。手元にある物を測って登録すると、代替にも出ます(登録は iPhone アプリの Pro)。

使い方

  1. 系統(DV・TS・HT・白ねじ・溶接)と呼び径を選び、両端の継手(90°エルボ・45°エルボ・大曲り)を選びます。
  2. 測り方を選びます。図面の寸法なら「芯々から」、受口の奥から奥まで巻尺を当てたなら「継手の奥から」(引き算は要りません)。
  3. 測った寸法を mm で打つと、切寸法(1mm 単位で切り上げ)と、引いた芯引き・受口深さが出ます。
  4. 振るときは「振りを出す」で、ずらす量(縦か横)を打ちます。使える送りが決まっているなら、それも打ちます。
  5. 「入りません」と出たら、重なる量と、入る組合せ(呼び径を落とす・角度切り)を順に出します。

芯引き(芯引き寸法)とは

芯引きは、継手の芯(中心)から受口の奥(管の端が当たる所)までの長さです。芯々(継手の中心から中心まで)の寸法から両端の芯引きを引くと、管を切る長さ(切寸法)になります。芯引きは現場の言い方で、規格の表では Z(寸法取り長さ)と書かれています。

芯々・芯引き・切寸法の関係(90°エルボ2つの間に直管を渡した図。概略図) 芯々 受口深さ 芯引き 切寸法(管を切る長さ) 芯引き 継手① 継手②
概略図です(縮尺どおりではありません)。管は受口の奥まで入るので、受口深さのぶんは継手の中に隠れます。
切寸法 = 芯々 − 芯引き① − 芯引き② 継手の奥から測ったとき: 切寸法 = 測った寸法 溶接(突合せ)はどちらも、さらにルート間隔 × 2 を引く

例: DV(排水塩ビ) 50 / 45°エルボ × 2・芯々 500mm なら、芯引き 18mm × 2・受口深さ 25mm × 2 で、500 − 18 − 18 = 464mm です。受口の奥から奥まで 464mm と測ったなら、そのまま 464mm で切ります。

切寸法は 1mm 単位で切り上げます。短く切った管は捨てるしかなく、長ければ詰められるからです。

エルボの芯引きと受口深さ(呼び径 50 の例)

同じ「50」でも、系統が違えば芯引きも受口深さも違います(TS と HT の受口深さを取り違えると全部の径でずれます)。例として呼び径 50 の行だけを載せます。ほかの呼び径は、上の「切寸法を出す」で系統と呼び径を選ぶと出ます。

系統・呼び径継手芯引き(mm)受口深さなど(mm)出典
DV(排水塩ビ) 5090°エルボ33受口深さ 25JIS K 6739(DV) / 積水化学 DV継手承認図 2020.7.31
DV(排水塩ビ) 5045°エルボ18受口深さ 25JIS K 6739(DV) / 積水化学 DV継手承認図 2020.7.31
TS(水道塩ビ) 5090°エルボ33受口深さ 20〜63JIS K 6743(TS) / 積水化学 TS継手承認図 2009.9.1(参考)
TS(水道塩ビ) 5045°エルボ18受口深さ 20〜63JIS K 6743(TS) / 積水化学 TS継手承認図 2009.9.1(参考)
HT(耐熱塩ビ) 5090°エルボ33受口深さ 52JIS K 6777(HT) / 積水化学 HT継手承認図 2020.10.5 / 2023.9.12(参考)
HT(耐熱塩ビ) 5045°エルボ28受口深さ 52JIS K 6777(HT) / 積水化学 HT継手承認図 2020.10.5 / 2023.9.12(参考)
白ねじ(ねじ込み) 50A90°エルボ36ねじ込み代 21JIS B 2301:2013 表A.2 + 附属書B 表B.1 ① / 日本金属継手協会 標準ねじ込み量N と一致 2013(参考)
白ねじ(ねじ込み) 50A45°エルボ21ねじ込み代 21JIS B 2301:2013 表A.2 + 附属書B 表B.1 ① / 日本金属継手協会 標準ねじ込み量N と一致 2013(参考)
溶接(突合せ) 50A90°エルボ76.2ルート間隔 2JIS B 2311/2312 / 式で算出(R = 1.5 × 呼び径[inch]) 2015
溶接(突合せ) 50A45°エルボ31.6ルート間隔 2JIS B 2311/2312 / 式で算出(R = 1.5 × 呼び径[inch]) 2015

DV 継手は 5社の承認図で値が一致しています。TS 継手は受口がテーパ(差込みに幅がある)、HT 継手は公表しているのが1社だけ、ねじ込み代は規格自身が「参考」と書いているので「参考」と付けています。同梱の継手は全部で 78 件(DV・TS・HT・白ねじ)と、溶接の式です。

引き算が正の数でも入らない寸法

組めるのは、切寸法が受口深さ(白ねじならねじ込み代)の和以上のときです。切寸法が 0 より大きくても、受口深さの和より短いと、受口の中で管の端どうしが重なって組めません。素直に引き算をすると、この区間でも正の数がそのまま出てしまいます。

例: TS(水道塩ビ) 100 / 90°エルボ × 2・芯々 200mm なら、引き算では 58mm 残りますが、受口深さの和は 168mm で、110mm 重なって入りません。

振りでも同じです。TS(水道塩ビ) 100 / 45°エルボ × 2・振り 115mm は、引き算では 84.6mm と出ますが、受口が 83.4mm 重なります。この組合せで組める振りは 173.9mm からです(今の振りは 115mm)。入る組合せとして「呼び径 50 に落とすと入ります」(切寸法 127mm / 送り 115mm / この組合せで組める最小の振り 114.6mm)を出します。

45°エルボ2つの組では、この「正の数なのに入らない」振りの幅が、白ねじ 15A の 15.6mm から TS 150 の 186.7mm まであります(幅 = 受口深さの和 × sin45°)。

45°エルボの振りの計算(斜辺と送り)

振り(ずらす量)から、継手の芯から芯までの斜めの長さ(斜辺)と、振っている間に元の向きへ進む長さ(送り)を出し、斜辺から芯引きを引きます。θ は継手の角度です。

斜辺(芯々) = 振り ÷ sinθ 送り = 振り ÷ tanθ 切寸法 = 斜辺 − 芯引き × 2

現場で言う「45°なら 1.4 倍」は、1 ÷ sin45° = 1.4142 を丸めた数です。45° だけは振りと送りが同じ長さになるので、1つの数で足ります。22.5° では、振りから斜辺を出す数(2.6131)と送りから斜辺を出す数(1.0824)が別なので、同じ掛け算は使えません。この計算は掛け算の概数を使わず、sin と tan をそのまま使います。

例: DV(排水塩ビ) 50 / 45°エルボ × 2・振り 160mm なら、真の振り 160mm・斜辺(芯々) 226.3mm・送り 160mm。切寸法は 190.3mm を切り上げて 191mm です。

DV の 90°エルボと大曲りは、流れ角度が 91°10′(勾配が付いている)なので、振りの計算にもこの角度を使います。

高さも横もずれる振り(立体の振り)

縦と横が同時にずれるときは、縦と横を先に合成した「真の振り」から斜辺を出し、最後に芯引きを引きます。

真の振り = √(縦² + 横²) 斜辺 = 真の振り ÷ sinθ 切寸法 = 斜辺 − 芯引き × 2 振り角 = 真上から見て、継手を管の軸まわりにまわす角度

大きいほうの振りだけで長さを出して芯引きを引き、あとから高さを合わせる順番だと、答えがずれます(45°エルボではたいてい短く出て、短く切った管は捨てるしかありません)。ずれる向きと量は、振りの大きさと継手で変わります。

このページの「振りを出す」に縦と横の両方を打つと、その継手で入るか入らないかと、入る組合せを出します。立体の振りの切寸法・振り角は iPhone アプリの Pro で出します。

TS継手(水道用)は切寸法が幅で出ます

TS 継手は受口がテーパで、ストッパーまで挿す決まりがありません。そこで「ストッパーまで挿した値」と「接着代の位置まで挿した値」の両方を出し、切寸法を幅で示します。

例: TS(水道塩ビ) 100 / 90°エルボ × 2・芯々 500mm なら、ストッパーまで挿せば 358mm、接着代の位置なら 250mm です(幅 108mm)。1つの数字で出すと、差込みの深さによってどちらかが必ず外れます。

白ねじ(ねじ込み)のねじ込み代

ねじ込み継手の芯引きは「継手の端面までの長さ − ねじ込み代」です。例: 白ねじ(ねじ込み) 50A の 90°エルボは、端面まで 57mm・ねじ込み代 21mm で、芯引きは 36mm。芯々 500mm なら切寸法は 428mm です。

ねじ込み代は JIS B 2301 附属書B のねじはめ合い長さで、規格自身が「参考(規定の一部ではない)」と書いています。締め込む力とねじの硬さで変わるので、合わないときは実物で確かめてください。深くねじ込むほど、同じ芯々を渡すのに管は長く要ります。

現場でよく言う「15A=11・20A=13・25A=15」は、ソケットの深さ(ねじが切ってある穴の深さ)で、ねじ込み代とは別の量です。

溶接エルボ(ロングエルボ)の芯引き

突合せ溶接のロングエルボは、曲げ半径 R から芯引きを式で出します。管は差し込まないので、受口深さの代わりにルート間隔(既定 2mm)のぶん短くなります。

R = 1.5 × 呼び径[インチ]× 25.4mm (15A〜25A は 38.1mm) 90°エルボの芯引き = R 45°エルボの芯引き = R × tan22.5°
呼び径90°の芯引き(mm)45°の芯引き(mm)
50A(2B)76.231.6
80A(3B)114.347.3
100A(4B)152.463.1
150A(6B)228.694.7
200A(8B)304.8126.3

R は外径の 1.5 倍ではありません。150A なら 228.6mm で、外径 168.3mm から出すと 252.45mm になり、90°エルボ2つで切寸法が 47.7mm 短く出ます。例: 溶接(突合せ) 150A / 90°エルボ × 2・芯々 1000mm なら切寸法は 539mm です。

45°の芯引きは JIS と ASME で同じではありません(50A で JIS 31.6mm・ASME 35.1mm)。このページは JIS の値で計算します。

22.5°・11.25° のエルボと角度切り

22.5°・11.25° のエルボは、公表されている寸法が入手できないので同梱していません(推測した値は入れていません)。振りが小さくて 45°エルボでは入らないときは、呼び径を落とすか、溶接の継手なら 90°エルボを途中で切って使う方法(角度切り)が候補になります。

角度切りは「エルボを何度で切るか」を逆に解きます。このページは「角度切りすると入る」かどうかを出し、角度切りの切寸法と送りは iPhone アプリの Pro で出します。

前提と注意

出典

規格票・カタログの表と条文は載せていません。式と、出典の名前と番号だけを引いています。