歯数の少ない標準平歯車に生じる切下げと、限界歯数の求め方です。
モジュールと歯数から中心距離・基準円直径・歯先円直径
切下げとは
KHK の「切下げ」は、小歯数の標準平歯車を歯切りするときに、カッタを干渉点よりも深く切込むと切下げ(アンダーカット)が発生するとしています。切下げとは、工具の刃先直線部(hc)で歯車の歯元における歯形曲線の一部分が切りとられる現象のことです。
切下げ限界歯数の式
標準平歯車で刃先直線部の深さを m とすると、切下げを生じない条件は次の式 (3.6) で、この条件から切下げ限界歯数 z が式 (3.7) で与えられます。
基準圧力角 20° では sin 20° = 0.342020、sin²20° = 0.116978 で、z = 2 ÷ 0.116978 = 17.097 です。資料も「基準圧力角α=20°のときの切下げ限界歯数zは17.1です。」としています。歯数は整数なので、17.1 より少ない 17 以下の標準平歯車に切下げが生じます。
圧力角ごとの切下げ限界歯数
「歯車の歯形及び寸法」は、圧力角は 20 度が一般的で、14.5 度・17.5 度などの特殊な圧力角を用いることもあるとしています。同じ式 (3.7) で計算すると次のとおりです(このページを作るときに計算した値)。圧力角が小さいほど、切下げ限界歯数は多くなります。
| 圧力角 α | sin²α | 2 ÷ sin²α | 小数第1位 |
|---|---|---|---|
| 14.5° | 0.062690 | 31.903 | 31.9 |
| 17.5° | 0.090424 | 22.118 | 22.1 |
| 20° | 0.116978 | 17.097 | 17.1 |
17 以下の歯数を使うとき
資料は「17以下の歯数でも、強度とかみ合い率に問題がなければ使用上さしつかえありません。」とし、切下げを防ぐ方法として歯車の転位を挙げています。KHK の「インボリュート歯車のかみ合い」は、歯車が正しく回転を伝達するには、かみ合い率は 1 より大きくなければならないとしています。表4.1 の計算例の小歯車(歯数 12)も、切下げ限界歯数より少ない歯数です。
切下げ限界転位係数(参考)
KHK の「歯車の転位」は、転位係数 x の歯車の切下げ限界歯数を式 (3.9)、歯数 z の歯車の切下げ限界転位係数を式 (3.10) で示しています。(3.10) は (3.9) を x について解いた形で、x = 0 とすると (3.9) は標準平歯車の (3.7) と同じになります。
基準圧力角 20° で (3.10) を計算すると次のとおりです(このページを作るときに計算した値)。資料の表4.3 の転位平歯車の例は、小歯車(z1 = 12)の切下げを防止し、歯先尖りにならない転位係数として x1 +0.6 を選んでいて、歯数 12 の限界転位係数 0.298 より大きい値です。転位した歯車の寸法は、このアプリでは計算しません。
| 歯数 z | 切下げ限界転位係数 x |
|---|---|
| 10 | 0.415 |
| 11 | 0.357 |
| 12 | 0.298 |
| 13 | 0.240 |
| 14 | 0.181 |
| 15 | 0.123 |
| 16 | 0.064 |
| 17 | 0.006 |
計算画面での表示
計算画面は、歯車ごとに「切下げ(限界歯数 17.1)」の判定を表示します。歯数 17 以下は「生じる」、18 以上は「生じない」です。基準円直径・歯先円直径・歯底円直径は、切下げが生じる歯数でも表4.1 の式のまま計算します。
出典
- 小原歯車工業(KHK)歯車技術資料「切下げ」(3.5 切下げ限界歯数)
- 小原歯車工業(KHK)歯車技術資料「歯車の転位」(3.6)
- 小原歯車工業(KHK)歯車技術資料「インボリュート歯車のかみ合い」(3.3 基礎円ピッチ・かみ合い率)
- 小原歯車工業(KHK)歯車技術資料「歯車の歯形及び寸法」(3.1 表3.1 歯形に関する用語・表3.2 モジュールの標準値)
- 小原歯車工業(KHK)歯車技術資料「平歯車・ラックの寸法計算」(4.1 表4.1 標準平歯車の計算・表4.2 歯数の求め方)
小原歯車工業の技術資料は、冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があるとしています。
モジュールと歯数から中心距離・基準円直径・歯先円直径