揚水井のまわりの定常の水位から、透水係数を求める式です。
揚水量と観測井2本の水位から透水係数と透水量係数
揚水試験の結果から透水係数を求めるティームの平衡式(Thiem の式)は、揚水井のまわりで、揚水量と地下水位が変わらない定常の状態を表す式です。地盤工学会の資料3-01 は、一般に Thiem 式と呼ばれているが、式は Dupuit(1863)が誘導したもので、Dupuit の式と呼び、揚水試験の結果の整理方法を Thiem の方法と呼ぶべきだとしています。資料によって「チームの平衡式」(吹田市の資料)、「テームの式」(全国地質調査業協会連合会の技術フォーラムの発表)とも書かれます。
被圧帯水層の式
- Q: 揚水量(m³/s)
- T: 透水量係数(m²/s)。T = b × k
- k: 透水係数(m/s)
- b: 帯水層の厚さ(m)
- r1・r2: 揚水井の中心から観測井までの距離(m)。r1 が近い方
- s1・s2: 観測井の水位低下量(m)
- ln: 自然対数
1つ目の式は、地盤工学会の資料3-01 の式(3.2) です。同じ資料は、揚水井から半径 r の円周を通る流量を Q = 2πbKr × dh/dr(ダルシー則の q = K × dh/dr を円周と厚さで積分した式)とし、これを積分して式(1.6)〜(1.9) を導いています。2本の観測井の水位低下量の差 s1 − s2 は、揚水量に比例し、透水量係数に反比例し、距離の比の対数に比例します。
不圧帯水層の式
- h1・h2: 帯水層の底から、観測井の水位までの高さ(m)。h1 が近い方
不圧帯水層では、水を通す厚さそのものが水位とともに変わります。地盤工学会の資料3-01 は、水面が極端に急に下がっていなければ、動水勾配を dh/dr と近似でき、半径 r の円筒を通る流量を Q = 2πKrh × dh/dr として、r1 から r2 まで積分すると h2² − h1² = Q ÷ (πK) × ln(r2 ÷ r1) になるとしています。
同じ資料は、この式を Q ÷ (2πK) × ln(r2 ÷ r1) = D' × (h2 − h1)(D' = (h2 + h1) ÷ 2)と書き直し、2点の平均水位高さ D' を被圧帯水層の層厚に当たるものとみなすと、被圧帯水層の式との関係がはっきりするとしています。このアプリは不圧のとき、参考として T = k × D' も「計算の内訳」に表示します。吹田市の No.64 と A3 の例では、D' = (h1 + h2) ÷ 2 = 5.550 m、T = k × D' = 29.0 m²/日 です。
常用対数で書く式
ln(r2 ÷ r1) = 2.3026 × log₁₀(r2 ÷ r1) なので、常用対数で書くこともあります。地盤工学会の資料3-01 は「一般には、常用対数を用いる」として、T = 2.3025Q ÷ (2π) × log₁₀(r2 ÷ r1) ÷ (s1 − s2) の形を示しています。吹田市の資料のチームの平衡式は k = 2.3Q ÷ (π(h2² − h1²)) × log(r2 ÷ r1) です。2.3 と 2.3026 の違いは 0.1 % ほどで、このアプリは自然対数で計算します。
式の前提
地盤工学会の資料3-01 の (1) 帯水層条件のうちの5つに、定常の式であることと、(3) 不圧帯水層の式の近似の条件を加えると、次のとおりです。(1) のもう1つの条件(揚水井を中心とする半径 R の円周上で水位低下量が 0)は、観測井2本の差をとる式(1.9) で R が消えるので、ここでは使いません。
- 帯水層は水平で、厚さが一定
- 透水性は等方(どの向きにも同じ透水係数)
- 帯水層の上下の層からの漏水の供給や逸水はない
- 降雨などの供給はない
- 揚水井は帯水層を完全に貫いている
- 揚水量が一定で、水位が安定した定常の状態
- 不圧帯水層は、水面が極端に急に下がっていない
非定常の途中の水位で計算できるか
地盤工学会の資料3-01 は、非定常の Theis の井戸関数の直線勾配の近似式からも、同じ式(3.2) が導けるとしています。定常の状態でも、非定常で Theis の井戸関数の直線近似ができる範囲でも、観測井の水位低下量は距離の対数に対して直線に並ぶので、観測井が3本以上なら、その直線の勾配(常用対数の1目盛り当たりの水位低下量 Δs)から T = 2.3025Q ÷ (2πΔs) と求められます。
影響圏半径
式(1.8) の Q = 2πbKs ÷ ln(R ÷ r) の R は、水位低下量が 0 になる影響圏半径です。地盤工学会の資料3-01 は、R は試験結果の整理の前には得られないので、観測井の位置 r と水位低下量 s の関係(2本の差)を使う、と説明しています。非定常の影響圏半径は R(t) ≒ 1.5 × √(T × t ÷ S)(t は揚水を始めてからの時間、S は貯留係数)です。同じ資料は、影響圏半径の定義をまとめた進士・西垣(2008)を引いて、Thiem の方法で得られる影響圏半径は、実際に水位低下量が 0 になる所ではなく、揚水井の周りの水位低下量を予測するための定義と考えるべきだとしています。
出典
揚水量と観測井2本の水位から透水係数と透水量係数