入熱は、60 × アーク電圧 × 溶接電流 を溶接速度で割った J/cm の値です。
アーク電圧・溶接電流・溶接速度から、入熱(kJ/cm)
入熱の式と記号
- HI(J/cm): 入熱
- E(V): アーク電圧
- I(A): 溶接電流
- V(cm/min): 溶接速度=溶接長さ ÷ 溶接時間
式と記号は日建連の鉄骨工事Q&A(A-3-15「工場溶接 入熱・パス間温度測定」)と同じです。同Q&Aは「入熱を直接測定することはできませんが、電流、電圧および溶接速度が測定できれば、以下の式から算出することができます」としています。神戸製鋼所の技術資料も、入熱量(J/cm)= 溶接電流(A)× アーク電圧(V)× 60 ÷ 溶接速度(cm/min)と同じ式を載せています。
60 を掛ける理由
日本溶接協会の解説では、溶接アークから材料への入熱は、近似的に溶接部に投入される電気エネルギーと考えてよいとし、入熱を「1分間に投入される電気エネルギー ÷ 1分間の移動量」と説明しています。溶接電流 × アーク電圧 はワット、つまり1秒間のジュール(J/s)です。溶接速度は1分間に進む長さ(cm/min)なので、電流 × 電圧 に 60 を掛けて1分間のジュールにそろえてから、溶接速度で割ります。
例題(日本溶接協会)
溶接電流 400 A・アーク電圧 40 V・溶接速度 40 cm/min のときの入熱は、
です。60 を掛けないで 400 × 40 ÷ 40 とすると 400 J/cm になり、正しい値の 60 分の 1 になります。同じ解説は、入熱を J/mm で表す場合もあり、2,400 J/mm も正解としています(1 cm = 10 mm なので J/cm を 10 で割った数)。
溶接長さと溶接時間からの式
溶接時間を秒で計ったときは、60 を掛けて分当たりの溶接速度にします。これを入熱の式に代入すると 60 が消え、入熱は「アーク電圧 × 溶接電流 × 溶接時間 ÷ 溶接長さ」、つまり溶接中に使った電気エネルギー(J)を溶接長さで割った数になります。例: 40 V・400 A で 40 cm を 60 秒 なら 40 × 400 × 60 ÷ 40 = 24,000 J/cm で、溶接速度 40.0 cm/min で計算した値と同じです。
単位の換算
| 表し方 | 例題の値 | 換算 |
|---|---|---|
| J/cm | 24,000 J/cm | 式で求めた値 |
| kJ/cm | 24.0 kJ/cm | J/cm ÷ 1,000 |
| J/mm | 2,400 J/mm | J/cm ÷ 10 |
建築鉄骨の管理値は kJ/cm で書かれています(全国鉄骨評価機構の性能評価基準の別記2 の「40kJ/cm 以下」など)。溶接速度が mm/min のときは 10 で割って cm/min にしてから式に代入します。
出典
- 日本建設業連合会 鉄骨工事Q&A A-3-15「工場溶接 入熱・パス間温度測定」(2012年9月制定・2016年7月改訂): HI = 60 × E × I ÷ V と記号・単位
- 日本溶接協会 溶接技術者交流会 WE-COM 会誌 vol.48「溶接バッテン! 第六話 溶接入熱問題」: 60 を掛ける理由・例題・J/mm で表す場合
- 神戸製鋼所 ぼうだより技術がいど vol.495(2017年7月)営業部ニュース「溶接ご法度集-6」: 入熱量(J/cm)の式
- 全国鉄骨評価機構「鉄骨製作工場の性能評価基準(M グレード)」別表第1 別記2 入熱・パス間温度: 管理値の単位(kJ/cm)
アーク電圧・溶接電流・溶接速度から、入熱(kJ/cm)