加熱温度の決め方・室温・しめしろ・資料の例について、質問と回答です。
軸受の内径・しめしろ・室温から、焼きばめの加熱温度(℃)
ベアリングヒーターは何度に設定すればよいですか
しめしろぶんだけ内径が広がる温度(室温+ΔT)が下限で、作業中の冷却を見込んでそれより高くし、上限より低くします。内径 100 mm・しめしろ 30 μm・室温 20 ℃ なら、下限が 44.0 ℃、ジェイテクトの「さらに20~30℃高く」を加えると 64.0 ℃〜74.0 ℃ で、どれも NTN・NSK の 120 ℃、ジェイテクトの 100 ℃、樹脂の保持器の 80 ℃ を下回ります。決める値は、使う軸受のメーカーのカタログで確かめてください。
なぜ室温を入力するのですか
式で求まるのは、加熱前後の温度差(温度上昇 ΔT)です。ヒーターや油の温度は、軸受の温度そのものとして設定します。そのため、加熱前の軸受と軸の温度(室温)に ΔT を加えた温度を加熱温度として表示します。NTN の技術解説も「軸受温度を室温+30℃程度に加熱すればよい」と、室温からの温度で書いています。
しめしろはどの値を入力しますか
軸と内輪のはめあいで決まるしめしろの最大値を、μm で入力します。NTN の図 6.5 の備考は「しめしろの最大値は0級軸受とのはめあい値である」、ジェイテクトの図 15-3 の備考は「この最大しめしろ値よりも大きい『内輪の膨張量』を得られるように加熱温度を決めればよい」としています。最大しめしろより小さい数を入力すると、実際の軸受と軸の組み合わせによっては温度が足りません。
資料の例の 23.8 ℃ と計算結果の 24.0 ℃ が違うのはなぜですか
NTN の技術解説の例(φ100・しめしろ 0.030 mm)は、必要加熱温度を 23.8 ℃ と書いています。同じ資料の式 δ = 12.5×10⁻⁶ × d × ΔT の係数のまま計算すると 24.0 ℃ で、0.2 ℃ の違いがあります。このアプリは資料に書かれた式と係数で計算しています。資料の結論の「室温+30℃程度」は、どちらの数でも変わりません。
線膨張係数は変えられますか
変えられません。NTN の技術解説の軸受の線膨張係数 12.5×10⁻⁶ /℃ で計算します。「詳しい設定」に、この係数を前提として表示しています。ほかの材料の軸受や部品を焼きばめするときは、その材料の線膨張係数をメーカーの資料で確かめてください。
温度上昇を手早く見積もる方法はありますか
ΔT(℃)= 80 × しめしろ(μm)÷ 内径(mm)です。係数 12.5×10⁻⁶ の逆数を、μm と mm の単位に合わせた数が 80 です。内径 120 mm・しめしろ 40 μm なら 80 × 40 ÷ 120 = 26.666…、画面の表示は 26.7 ℃ です。
出典
- NTN 精密転がり軸受 技術解説「6. 軸受の取扱い」p.29(焼きばめによる挿入について): p.29 の式・例・図 6.5 の備考
- ジェイテクト(Koyo)ベアリングの基礎知識「軸受の取付け」15-3-2 軸受の取付け方法(表 15-2・図 15-3): 図 15-3 の備考・「さらに20~30℃高く加熱しておくとよい」・100℃以下
- NTN「ベアリングの取扱い」CAT. NO. 9103/J p.4(2.3 熱ばめ): 120℃以上に加熱しない
- 日本精工(NSK)ベアリングのABC「10.1 軸受の取付け」(焼きばめ・油槽加熱): 120℃以上に加熱しない
軸受の内径・しめしろ・室温から、焼きばめの加熱温度(℃)