全熱は顕熱と潜熱を合わせた熱量で、比エンタルピーの差から求めます。
全熱 = 顕熱 + 潜熱
JEHC104 は、冷房時のすきま風負荷と外気負荷を「全熱(顕熱+潜熱)」で見込み、暖房時は湿度の変化による負荷を考えずに顕熱だけを見込む、としています。顕熱は空気の温度が変わる分、潜熱は湿度が変わる分の熱量です。温度差の式(0.33 × V × Δt)で求められるのは顕熱だけなので、空気から湿気を取る分まで含めた冷房能力は、比エンタルピーの差で求めます。
比エンタルピーの単位は kJ/kg(DA) です。JEHC104 は、空調機器の容量を算出するときに空気線図を作り、空調機の運転状態(吸込みと吹出しの状態点の温度・湿度・エンタルピー)を確かめることを勧めています。
例: 外気 34.8 ℃・室内 25.0 ℃
JEHC104 の計算例の温湿度条件は、冷房の外気が 34.8 ℃DB・相対湿度 52.6 %・比エンタルピー 82.4 kJ/kg(DA)、厨房の室内が 25.0 ℃DB・80.0 %・65.8 kJ/kg(DA) です。給気量 6,790 m³/h の外気を室内の状態まで冷やす熱量(全熱)は、1.2 × 6,790 × 16.6 ÷ 3.6 = 37,571 W(37.57 kW)です。
同じ空気を温度差(34.8 − 25.0 = 9.8 ℃)だけで見ると、0.33 × 6,790 × 9.8 = 21,959 W です。全熱との差の約 15,612 W が、湿度が下がる分(潜熱)にあたります(係数の違う2つの式の差なので目安です)。顕熱は全熱の約 58 % です。温度差だけで能力を見ると、この分を見落とします。
顕熱比(SHF)
JEHC104 は顕熱比を SHF = 顕熱 ÷ 全熱 とし、空気線図の上で室内の状態点から SHF の線を引いて、空調機の出口の空気の状態点を仮定しています。計算例の室内負荷は、顕熱 12,350 W・潜熱 2,871 W・全熱 15,221 W で、SHF は 0.81 です。空調機を選ぶときは、全熱の能力が合計の全熱負荷を上回ることに加えて、顕熱の能力が合計の顕熱負荷を上回ることも条件にしています。
出典
- 一般社団法人 日本エレクトロヒートセンター「業務用電化厨房施設の空調設備設計指針 JEHC104-2007」(2007年7月31日 制定・2019年2月1日 改定)(解説編 p.8 1-6・1-7、p.9 表5、p.12〜13 計算例、p.16〜21)