説明

熱電対の基準接点(冷接点)補償の計算

基準接点が 0 ℃ でないときは、測った熱起電力にその温度の分を加えてから温度にします。

測れる熱起電力は2つの接点の差

熱電対で測れる熱起電力は、測温接点の温度だけでは決まりません。BIPM の手引きは、測った熱起電力を次の式で表しています(式 (8))。

Vmeas = E(tm) − E(tr) Vmeas: 測った熱起電力 E(…): 規準関数(基準接点 0 ℃ の値) tm: 測温接点の温度 tr: 基準接点の温度

規準関数は 0 ℃ で E = 0 なので、基準接点を 0 ℃ に保てば、測った値はそのまま規準熱起電力表の値です。基準接点が 0 ℃ でなければ、基準接点の温度の分だけ測った値が小さく(tr が 0 ℃ より低ければ大きく)なります。

基準接点の補償の手順

  1. 基準接点の温度 tr を測る(熱電対か補償導線が、計器の銅の線につながる所の温度)。
  2. その温度の熱起電力 E(tr) を、規準関数で求める。
  3. 測った熱起電力に E(tr) を加える。合計が、基準接点 0 ℃ のときの熱起電力 E(tm) です。
  4. 合計を逆関数(か表)で温度にする。

BIPM の手引きも、測った電圧にまず E(tr) を加え、それから規準関数(か逆関数)で温度に換算するとしています。

例(K・基準接点 25 ℃)

K の熱電対で 3.096 mV を測り、計器の端子が 25 ℃ のとき、E(25 ℃) = 1.0002 mV を加えて 4.0962 mV。逆関数で 99.97 ℃(小数1桁で 100.0 ℃)です。

温度どうしを加えてはいけない

測った熱起電力を温度にしてから基準接点の温度を加えると、正しい温度になりません。規準関数は直線ではないためです。加えるのは温度ではなく、熱起電力 E(tr) です。下の表は、どれも基準接点が 25 ℃ のときの例です。

種類測った熱起電力正しい温度温度を加えた値
K3.096 mV100.0 ℃100.9 ℃
T−3.000 mV−55.6 ℃−62.0 ℃
R5.000 mV560.7 ℃573.1 ℃
B5.000 mV1,017.8 ℃1,043.0 ℃

この例では、K の違いは 0.9 ℃ ですが、R は 12.4 ℃、B は 25.3 ℃ 違います。B は室温付近の熱起電力がほとんど 0 なので、基準接点の温度を加えると、その分そのまま高く読んでしまいます。

補償の3つのしかた

BIPM の手引きは、基準接点の扱いを3つに分けています。

基準接点の温度はどこを測るか

基準接点は、熱電対の線が計器の銅の線につながる所です。BIPM の手引きは、基準接点を温度のそろった所に置き、補償に使う温度計を熱電対の端子と同じ温度にするよう求めています。補償導線(延長用の線)を使うときは、熱電対と補償導線のつなぎ目も温度のそろった所に置きます。

B の基準接点

B は室温付近の熱起電力がとても小さく、NIST Monograph 175 によると、基準接点 0 ℃ の熱起電力は約 42 ℃ で符号が替わり、0〜50 ℃ の間では 21 ℃ 付近の最小 −2.6 µV から 50 ℃ の最大 2.3 µV までです(このアプリの式でも E(21 ℃) = −2.6 µV、E(50 ℃) = 2.3 µV)。そのため、基準接点が 0〜50 ℃ なら 0 ℃ とみなしてよく、誤差は 3 µV を超えないとしています。

出典

熱電対の起電力を計算する