説明

熱電対の起電力の計算式(規準関数)

温度から熱起電力を求める式(規準関数)の形と範囲、K の係数と計算の例です。

規準関数とは

規準関数は、熱電対の種類ごとに、測温接点の温度と熱起電力の関係を決めた式です。NIST Monograph 175 と、その表と関数を収録した NIST ITS-90 Thermocouple Database は、8種類(貴金属の B・R・S と、卑金属の E・J・K・N・T)の規準関数を、温度は 1990年国際温度目盛(ITS-90)、熱起電力は 1990年の SI のボルトで示しています。どの関数と表も、基準接点が 0 ℃ のときの値です。JIS C 1602:2015(熱電対)も、温度値は ITS-90 に準拠するとしています。

式の形

規準関数は温度 t(℃)の多項式で、熱起電力 E(mV)を求めます。

E = c0 + c1·t + c2·t² + … + cn·tⁿ E: 熱起電力(mV・基準接点 0 ℃) t: 測温接点の温度(℃・ITS-90) c0〜cn: 種類と温度の範囲ごとの係数

K の 0〜1,372 ℃ だけは、多項式に指数の項を加えます。

E = Σ cᵢ·tⁱ + a0·exp(a1·(t − a2)²)

NIST Monograph 175 は、K の−脚がおよそ 150〜200 ℃ で磁気変態を起こし、ゼーベック係数が乱れるため、その分を表す指数の項を加えたとしています。

式は温度の範囲ごとに分かれる

どの種類も、規準関数は2つか3つの式に分かれています。E・K・N・T は 0 ℃ で、J は 760 ℃ で、R と S は 1,064.18 ℃ と 1,664.5 ℃ で、B は 630.615 ℃ で式が替わります。NIST Monograph 175 によると、E・K・N・T の 0 ℃ は、前の関数の 0 ℃ より下が少し違う組成の材料で作られていたため、J の 760 ℃ は、760 ℃ より上が別の材料で作られていたことと、+脚の鉄が 760 ℃ 付近で磁気変態を起こすことによります。R と S は、1,064.18 ℃ より下が新しい測定から、上は前の関数を白金の凝固点 1,768.1 ℃ に合わせて直して作った式です。境目の温度では、どちらの式でもほぼ同じ値になります。

種類式の範囲式の次数
K−270〜0 ℃10次
0〜1,372 ℃9次+指数の項
J−210〜760 ℃8次
760〜1,200 ℃5次
T−270〜0 ℃14次
0〜400 ℃8次
E−270〜0 ℃13次
0〜1,000 ℃10次
N−270〜0 ℃8次
0〜1,300 ℃10次
R−50〜1,064.18 ℃9次
1,064.18〜1,664.5 ℃5次
1,664.5〜1,768.1 ℃4次
S−50〜1,064.18 ℃8次
1,064.18〜1,664.5 ℃4次
1,664.5〜1,768.1 ℃4次
B0〜630.615 ℃6次
630.615〜1,820 ℃8次

K の係数(0〜1,372 ℃)

NIST のファイル(type_k.tab.txt)の係数を、字のまま並べました。E は mV、t は ℃ の式です。

c0 = -0.176004136860E-01 c1 = 0.389212049750E-01 c2 = 0.185587700320E-04 c3 = -0.994575928740E-07 c4 = 0.318409457190E-09 c5 = -0.560728448890E-12 c6 = 0.560750590590E-15 c7 = -0.320207200030E-18 c8 = 0.971511471520E-22 c9 = -0.121047212750E-25 a0 = 0.118597600000E+00 a1 = -0.118343200000E-03 a2 = 0.126968600000E+03

計算の例(K)

上の式で求めた K の熱起電力です。小数3桁に丸めると、NIST の 1 ℃ ごとの表と同じ値になります。このアプリの式は、8種類の表の全部の値と、小数3桁で一致することを確かめています。

測温接点の温度熱起電力(基準接点 0 ℃)
100 ℃4.096 mV
200 ℃8.138 mV
300 ℃12.209 mV
500 ℃20.644 mV
1,000 ℃41.276 mV

よくある間違い

出典

熱電対の起電力を計算する