法令が決める勾配の数と、決めていない所をまとめました。
建築基準法施行令 第129条の2の4 第3項は、建築物に設ける排水のための配管設備について、次のように決めています。
一 排出すべき雨水又は汚水の量及び水質に応じ有効な容量、傾斜及び材質を有すること。
三 配管設備の末端は、公共下水道、都市下水路その他の排水施設に排水上有効に連結すること。
法令の字は「有効な容量、傾斜及び材質」までで、呼び径ごとの勾配の数(1/50 など)は書いていません。数を決めているのは、国の建物の工事では公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)2.6.1 です(排水管の勾配の基準のページ)。
告示(昭和50年建設省告示第1597号)
同じ第3項の第五号「国土交通大臣が定めた構造方法」が、告示「建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件」です。その第二は、排水管について、掃除口を設ける等保守点検を容易に行うことができる構造とすること、冷蔵庫・水飲器・空気調和機などの機器の排水管や給水タンク等の水抜管・オーバーフロー管に直接連結しないこと、雨水排水立て管を汚水排水管や通気管と兼用・連結しないこと、を決めています。排水管の勾配の数は書いていません。
告示の中にある勾配の数は、排水槽の底の勾配です。
排水槽の底の勾配は吸い込みピットに向かつて十五分の一以上十分の一以下とする等内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる構造とすること。
1/15 以上 1/10 以下は、管ではなく排水槽(排水を一時的に滞留させるための槽)の底の勾配です。百分率では 6.67 % 以上 10 % 以下です。
下水道の排水設備(下水道法施行令 第8条)
下水道法 第10条は、公共下水道の排水区域の土地の下水を公共下水道に流入させるために必要な排水管・排水渠その他の排水施設を「排水設備」と呼び、建物の敷地なら建物の所有者が設けるとしています。同じ条の第3項で、排水設備の設置と構造は、建築基準法などの規定があるときはそれによるほか、政令で定める技術上の基準によります。その基準が下水道法施行令 第8条です。
五 管渠の勾配は、やむを得ない場合を除き、百分の一以上とすること。
六 排水管の内径及び排水渠の断面積は、公共下水道管理者である地方公共団体の条例で定めるところにより、その排除すべき下水を支障なく流下させることができるものとすること。
1/100 以上なので、排水設備の排水管を 20 m 引くなら落差は 200 mm 以上です。管の内径は、その地方公共団体の条例で決まります。同じ第8条の第8号は、暗渠の部分で、下水の流路の方向や勾配が著しく変化する箇所(管渠の清掃に支障がないときを除く)や、管渠の長さがその内径(内のり幅)の 120 倍を超えない範囲内の清掃上適当な箇所などに、ますかマンホールを設けることを決めています(内径 100 mm なら 12 m、150 mm なら 18 m を超えない範囲)。
市町村の基準(例: 千葉市・深谷市)
施行令の 1/100 は、国が決めた最低の値です。実際の排水設備の勾配は、施工する土地の市町村(下水道管理者)の基準で決まり、管の内径ごとに 1/100 より急な勾配が決められていることが多くあります。たとえば千葉市排水設備確認申請審査基準 第5条(千葉市「排水設備の技術基準について(抜粋)」2026.9.1)の汚水管の表(表2-1)は、排水人口で排水管の内径を決め、その内径の勾配を次のようにしています。
| 排水人口(人) | 内径(mm) | 勾配 | 分数 |
|---|---|---|---|
| 150 未満 | 100 以上 | 2.0/100 | 1/50 |
| 150 以上 300 未満 | 125 以上 | 1.7/100 | 1/58.8 |
| 300 以上 500 未満 | 150 以上 | 1.5/100 | 1/66.7 |
| 500 以上 | 200 以上 | 1.2/100 | 1/83.3 |
排水人口は 2.9 人/戸で計算します(同じ表の注)。分数と落差は、表の勾配からこのページを作るときに計算した値です。
同じ 20 m でも、施行令の 1/100 なら落差は 200 mm ですが、千葉市の内径 100 mm の汚水管(2.0/100)では 400 mm です。表の勾配で 20 m 引いたときの落差は、2.0/100 で 400 mm、1.7/100 で 340 mm、1.5/100 で 300 mm、1.2/100 で 240 mm です。雨水管・合流管の表(表2-2)は排水面積で分け、200 m² 未満の内径 100 mm 以上・2.0/100 から、1,500 m² 以上の 250 mm 以上・1.0/100 までです。
同じ表の適用注意は、地形などの状況で表の勾配によることができない場合は管内流速を 0.6〜3.0 m/s の範囲内(雨水・合流管の管内最低流速は 0.8 m/s)とすること、一つの建築物(又は敷地)から排除される汚水の一部を流す延長 3 m 以下の排水管は内径 75 mm で勾配 3/100 以上とすること、排水管の延長がその内径の 120 倍を超えない範囲内に桝又はマンホールを設けること(内径 100 mm なら 0.1 m × 120 倍=12 m 以下)を書いています。120 倍は施行令 第8条第8号と同じです。
深谷市の「深谷市公共下水道宅地内排水設備設置の手引き」も、排水人口 150 人未満は管径 100 mm 以上・100 分の 2 以上、500 人以上は 200 mm 以上・100 分の 1.2 以上と、同じ区分の表です。市町村の基準は改められることがあるので、施工する土地の市町村の今の基準で確かめてください。
計算の画面の「下水道の排水設備(最低 1/100)」は、この国の最低の値との比べです。市町村の勾配と比べるときは、「勾配を求める」で長さと落差から勾配を計算して表の勾配(2.0/100 は 2 %=1/50)と比べるか、詳しい設定で勾配を % で入力して、その勾配の落差を計算します。
まとめ
- 建築基準法施行令: 排水の配管設備は「有効な傾斜」を持つこと。数は書いていない
- 告示 第1597号: 排水槽の底は吸い込みピットに向かって 1/15 以上 1/10 以下
- 公共建築工事標準仕様書: 屋内横走り排水管は呼び径ごとに最小 1/50〜1/200(原則)
- 下水道法施行令 第8条: 下水道の排水設備の管渠は、やむを得ない場合を除き 1/100 以上(国の最低の値)
- 市町村の基準: 排水設備の勾配は内径ごとに決まり、1/100 より急なことが多い(千葉市の汚水管は内径 100 mm 以上で 2.0/100)
出典
- e-Gov 法令検索「建築基準法施行令」第129条の2の4 第3項(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)
- 国土交通省「建築物に設ける飲料水の配管設備及び排水のための配管設備の構造方法を定める件」(昭和50年建設省告示第1597号)
- e-Gov 法令検索「下水道法施行令」第8条(排水設備の設置及び構造の技術上の基準)
- e-Gov 法令検索「下水道法」第10条(排水設備の設置等)
- 千葉市「排水設備の技術基準について(抜粋)」(2026.9.1)1 排水管の内径・勾配(千葉市排水設備確認申請審査基準 第5条 表2-1 汚水管・表2-2 雨水管又は合流管)
- 深谷市「深谷市公共下水道宅地内排水設備設置の手引き」1 排水設備工事の基準(1)排水管 ①排水管の管径及び勾配
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)」第2編 第2章 第6節 2.6.1 勾配(p.62〜63)