乾き飽和蒸気の比エンタルピーと飽和温度を、圧力から求めます。
ボイラー効率の式の h″ は、発生した蒸気の比エンタルピーです。乾き飽和蒸気(飽和水を含まない飽和蒸気)の比エンタルピーは、蒸気の圧力で決まります。このアプリは蒸気表の代わりに、国際水・蒸気性質協会(IAPWS)の工業用の式 IAPWS-IF97 で求めます。
求め方
- 圧力計の読み(ゲージ圧)に標準大気圧 0.101325 MPa を加えて、絶対圧にします。蒸気表と IAPWS-IF97 の圧力は絶対圧です。
- 絶対圧から飽和温度を求めます(IAPWS-IF97 の領域4 の式(31))。
- その圧力と飽和温度で、蒸気の比エンタルピーを求めます(領域2 の式(15)〜(17))。飽和水の比エンタルピーは領域1 の式(7) です。
係数は IAPWS-IF97 の表のとおりで、IAPWS-IF97 が載せている検算の値(表5・表15・表35・表36)と9桁まで同じになることを確かめています。
圧力計の読みごとの値
| ゲージ圧(MPa) | 絶対圧(MPa) | 飽和温度(℃) | 飽和蒸気 h″(kJ/kg) | 飽和水(kJ/kg) | 蒸発潜熱(kJ/kg) |
|---|---|---|---|---|---|
| 0.0 | 0.101325 | 99.97 | 2,675.53 | 418.99 | 2,256.54 |
| 0.1 | 0.201325 | 120.42 | 2,706.54 | 505.57 | 2,200.97 |
| 0.2 | 0.301325 | 133.68 | 2,725.09 | 562.10 | 2,163.00 |
| 0.3 | 0.401325 | 143.73 | 2,738.21 | 605.24 | 2,132.97 |
| 0.4 | 0.501325 | 151.94 | 2,748.23 | 640.62 | 2,107.61 |
| 0.5 | 0.601325 | 158.92 | 2,756.23 | 670.88 | 2,085.36 |
| 0.6 | 0.701325 | 165.03 | 2,762.83 | 697.48 | 2,065.35 |
| 0.7 | 0.801325 | 170.48 | 2,768.37 | 721.32 | 2,047.05 |
| 0.8 | 0.901325 | 175.42 | 2,773.10 | 743.00 | 2,030.10 |
| 1.0 | 1.101325 | 184.12 | 2,780.71 | 781.43 | 1,999.28 |
| 1.6 | 1.701325 | 204.35 | 2,794.55 | 872.06 | 1,922.49 |
| 3.0 | 3.101325 | 235.71 | 2,803.28 | 1,017.12 | 1,786.17 |
表の数は、このページを作るときに IAPWS-IF97 の式で求めた値です。
蒸気表と比べる
環境省の CO2削減対策Navi(121131)は、日本機械学会の蒸気表(1999年)から飽和蒸気のエンタルピーを抜粋しています。0.101325 MPa の飽和温度が 99.974 ℃ なので、表の圧力は絶対圧です。同じ圧力で IAPWS-IF97 の式から求めた値と並べると、次のとおりです。
| 絶対圧(MPa) | 飽和温度 表1(℃) | 飽和温度 式(℃) | 飽和蒸気 表1(kJ/kg) | 飽和蒸気 式(kJ/kg) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 179.89 | 179.89 | 2,777.12 | 2,777.12 |
| 0.7 | 164.95 | 164.95 | 2,762.75 | 2,762.75 |
| 0.5 | 151.84 | 151.84 | 2,748.11 | 2,748.11 |
| 0.3 | 133.53 | 133.53 | 2,724.89 | 2,724.89 |
| 0.101325 | 99.974 | 99.974 | 2,675.53 | 2,675.53 |
蒸気表の圧力で計算の画面に入力するときは、「詳しい設定」の圧力の表し方を「絶対圧」にします。ゲージ圧のまま蒸気表の圧力を入力すると、0.1 MPa ほど高い圧力で計算します。
圧力を下げると蒸発潜熱が大きくなる
同じ算定シートは、絶対圧 0.9 MPa の蒸発潜熱 2,030.31 kJ/kg に対して 0.6 MPa では 2,085.64 kJ/kg と 2.72 % 大きいことから、加熱に余裕があれば運転圧力を下げて蒸気の量を減らせるとしています(式で求めると 2,030.31 kJ/kg と 2,085.64 kJ/kg・2.72 %)。香川県の指針も、使用目的の許容範囲内で蒸気の圧力を下げる対策を挙げています。ただし算定シートは、圧力を下げると蒸気の乾き度が悪くなりキャリオーバーを起こすことがあるので、運転できる最低の圧力をボイラーの製造会社に確かめるよう書いています。
乾き度と過熱蒸気
J-Net21 は、蒸気の中には飽和水が含まれていること(乾き度が 1.0 でない)があり、出熱を正確に求めるのはかなり難しいと書いています。乾き度が 1.0 より小さいと、実際の比エンタルピーは乾き飽和蒸気の値より小さくなり、乾き飽和蒸気の値で計算した効率は高めになります。過熱蒸気の比エンタルピーは圧力だけでは決まりません。乾き度が分かっているときや過熱蒸気のときは、計算の画面で「値を入力する」を選び、蒸気表などの値を入力します。
圧力から求められるのは、飽和温度 350 ℃(絶対圧 16.52 MPa)までです。IAPWS-IF97 で飽和蒸気を領域2 の式で表せる上の端です。