説明

炭素当量と予熱(低温割れ・最高硬さ・予熱温度の標準)

Ceq が高いほど熱影響部は硬くなりやすく、必要な予熱温度も高くなります。

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ミルシートの化学成分から Ceq・Pcm と SN 材の上限の判定

Ceq と熱影響部の最高硬さ

神戸製鋼の The ABC's of Arc Welding の図1 は、20 mm 厚の軟鋼と高張力鋼に D5016 の溶接棒でビードオンプレート溶接をしたときの、熱影響部の最高硬さと Ceq の関係です。Ceq が高いほど最高硬さが上がり、最高硬さは Hmax =(666Ceq + 40)± 40 で推定できると書いています。

この式に当てはめると、Ceq 0.36 % で約 280 HV、Ceq 0.44 % で約 333 HV(どちらも ± 40)です。図1 の条件での目安で、ほかの板厚や溶接の条件の硬さではありません。

同じ資料は、この考え方の最も重要な使い方は硬さの予測ではなく、硬いマルテンサイトや延性の乏しい組織を作らないために必要な最低の予熱温度を決めることだとし、Ceq が高いほど必要な予熱温度も高くなると書いています。

低温割れと予熱の目的

日建連の鉄骨工事 Q&A「予熱」によると、予熱は JIS の溶接用語で「溶接又は熱切断に先立って行う母材の加熱」と定義され、主として低温割れを防ぐために必要に応じて行います。低温割れは、溶接後に溶接部の温度が常温付近に下がってから発生する割れの総称で、ルート割れ、ビード下割れ、止端割れなどがこれに属します(JIS Z 3001-4)。

低温割れは、①溶接部に侵入した水素、②室温付近で溶接部に生じる応力、③熱影響部または溶接金属の硬化の三つの要因の相互作用で発生します。炭素当量が関わるのは③の硬化です。予熱は溶接後の冷却速度を遅くし、拡散性水素の放出を促し、熱影響部の硬さを減らし、溶接応力も少なくします。

建築鉄骨では局部加熱が標準の施工法で、予熱の範囲は溶接線の全周の約 100 mm 離れた範囲までです。予熱の管理は溶接開始時の最低温度を確保すること、パス間温度の管理は最高温度を抑えることです。

予熱温度の標準(鉄骨工事技術指針)

日建連の鉄骨工事 Q&A は、日本建築学会の鉄骨工事技術指針(工場製作編・2018)が示す予熱温度の標準を参考に載せています。この表には「注」があるので、使うときは原本を確かめるように書かれています。

SN400・SM400・SS400

板厚(mm)低水素系以外の被覆アーク溶接低水素系被覆アーク溶接炭酸ガスシールドアーク溶接・サブマージアーク溶接
t<25予熱なし予熱なし予熱なし
25≦t<3250℃予熱なし予熱なし
32≦t<4050℃予熱なし予熱なし
40≦t≦5050℃50℃予熱なし
50<t≦75―50℃予熱なし
75<t≦100―80℃50℃

SN490・SM490

板厚(mm)低水素系被覆アーク溶接炭酸ガスシールドアーク溶接・サブマージアーク溶接
t<25予熱なし予熱なし
25≦t<32予熱なし予熱なし
32≦t<4050℃予熱なし
40≦t≦5050℃予熱なし
50<t≦7580℃50℃
75<t≦100100℃80℃

表は鋼種と溶接法と板厚で予熱温度を分けていて、炭素当量の値では分けていません。鋼材の Ceq・Pcm と予熱温度の関係は、施工要領書と原本で確かめます。

この計算が決めないこと

このアプリは Ceq と Pcm を求めて SN 材の上限と比べるだけで、予熱の要否や予熱温度は決めません。予熱の要否と温度は、鋼種・板厚・溶接法などで決まります。施工要領書と、設計者・監理者の確認によります。

新日鉄技報 第380号は、溶接割れが鋼材の化学成分や板厚、溶着金属の水素量、継手の拘束度などの影響を受けること、実際の予熱温度の設定では JIS Z 3158 の y 形溶接割れ試験で確かめることが望ましいとされていることを書いています。

出典

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ミルシートの化学成分から Ceq・Pcm と SN 材の上限の判定