C・Si・Mn だけの鋼と、Cu・Ni・Cr・Mo・V・B を含む鋼の計算例です。
ミルシートの化学成分から Ceq・Pcm と SN 材の上限の判定
例1 C・Si・Mn だけの鋼
C 0.16・Si 0.35・Mn 1.45(ほかは 0) の鋼です。計算のための例で、実際のミルシートの値ではありません。
Ceq = 0.16+0.35/24+1.45/6+0/40+0/5+0/4+0/14
= 0.16+0.014583+0.241667+0+0+0+0
= 0.41625 → 0.416 %
Pcm = 0.16+0.35/30+1.45/20+0/20+0/60+0/20+0/15+0/10+5×0
= 0.16+0.011667+0.0725+0+0+0+0+0+0
= 0.244166… → 0.244 %
SN490B・板厚 25 mm の上限(Ceq 0.44 %・Pcm 0.29 %)と比べると、Ceq は「○ 上限以下」、Pcm は「○ 上限以下」です。同じ鋼を SN400B の上限(Ceq 0.36 %・Pcm 0.26 %)と比べると、Ceq は「✗ 上限を超える」、Pcm は「○ 上限以下」です。
例2 合金元素を含む鋼
C 0.12・Si 0.30・Mn 1.40・Cu 0.25・Ni 0.40・Cr 0.20・Mo 0.10・V 0.03・B 0.0010 の鋼です。Cu は Pcm と IIW の式だけに、B は Pcm の式だけに含まれます。
Ceq = 0.12+0.30/24+1.40/6+0.40/40+0.20/5+0.10/4+0.03/14
= 0.12+0.0125+0.233333+0.01+0.04+0.025+0.002143
= 0.442976… → 0.443 %
Pcm = 0.12+0.30/30+1.40/20+0.25/20+0.40/60+0.20/20+0.10/15+0.03/10+5×0.0010
= 0.12+0.01+0.07+0.0125+0.006667+0.01+0.006667+0.003+0.005
= 0.243833… → 0.244 %
SN490B・板厚 32 mm の Ceq の上限 0.44 % と比べると、計算結果は「丸め方で判定が変わります」です(丸める前 0.442976… %・小数第2位では 0.44 %)。板厚 50 mm なら上限は 0.46 % で「○ 上限以下」です。Pcm はどちらの板厚でも上限 0.29 % に対して「○ 上限以下」です。
例3 上限ちょうどの成分
C 0.16・Si 0.48・Mn 1.56(ほかは 0) の Ceq は 0.440 % で、SN490B の上限 0.44 %(板厚 40 mm 以下)と同じです。上限は「以下」なので「○ 上限以下」です。
C 0.14・Si 0.24・Mn 1.26(ほかは 0) の Ceq は 0.360 % で、SN400B の上限 0.36 % と同じです(○ 上限以下)。
C 0.18・Si 0.30・Mn 1.60・Cu 0.20・Cr 0.20(ほかは 0) の Pcm は 0.290 % で、SN490B の上限 0.29 % と同じです(○ 上限以下)。この鋼の Ceq は 0.499 % で、SN490B の Ceq の上限は超えます(✗ 上限を超える)。受け入れの判定に Ceq と Pcm のどちらを使うかは、鋼材の注文の条件と JIS G 3136 の本文で確かめます。
C 0.16・Si 0.30・Mn 1.40・Cu 0.20・Cr 0.20(ほかは 0) の Pcm は 0.260 % で、SN400B の上限 0.26 % と同じです(○ 上限以下)。Ceq は 0.446 % で、SN400B の上限 0.36 % を超えます(✗ 上限を超える)。
例4 NDS G 3111D の製造実績例(表の値)
防衛省規格 NDS G 3111D(艦船用超高張力鋼板)の解説表3 は、NS80E の製造実績例(板厚 100 mm)として、鋼番 A の溶鋼分析値 C 0.08・Si 0.25・Mn 0.79・Cu 0.01・Ni 4.28・Cr 0.78・Mo 0.52・V 0.06 と、炭素当量 Ceq. 0.62 % を示しています。式は JIS G 3136 の表と同じ Ceq の式です。
Ceq = 0.08+0.25/24+0.79/6+4.28/40+0.78/5+0.52/4+0.06/14
= 0.08+0.010417+0.131667+0.107+0.156+0.13+0.004286
= 0.619369… → 0.619 %
小数第2位に丸めると 0.62 % で、解説表3 の Ceq. 0.62 % と同じです。NDS G 3111D の 5.1.2 は、和の 1/1 000 の位を JIS Z 8401 によって丸めた数値を炭素当量としています。表に B の値が無いので、Pcm は求めません(P と S は式に含まれません)。
出典
- 中部鋼鈑 製品カタログ(JIS 規格品 p.4「建築構造用圧延鋼板(JIS G3136)」): p.4 の表の備考(Ceq・Pcm の式)と表の上限
- 防衛省規格 NDS G 3111D 艦船用超高張力鋼板(令和3年3月29日改正): 5.1.2(式と丸め方)・解説表3(NS80E の製造実績例の溶鋼分析値と Ceq.)
ミルシートの化学成分から Ceq・Pcm と SN 材の上限の判定