全揚程は、実揚程と配管の損失と吐出し速度水頭の和です。
ポンプは、配管の中の抵抗と、吸込みと吐出しの高さの差を上回る揚程で、決めた流量を送る必要があります。中小企業基盤整備機構の J-Net21(省エネQ&A)は、それらの合計を全揚程とし、次の式で表しています。
全揚程 = 実揚程 + 配管損失水頭 + 吐出し速度水頭 …… ①
実揚程 = 吐出し水位 − 吸込み水位 …… ②
実揚程は流量にかかわらず一定なので固定抵抗、配管の抵抗による損失と吐出し速度による損失は流量で変わるので変動抵抗と呼ばれます。同じ資料は、変動抵抗は流量の2乗に比例する、と書いています。
このアプリの式
給水のポンプでは、末端の給水用具に水圧が要ります。八千代市の給水装置工事 設計施工指針は、直結増圧式の加圧ポンプの全揚程(P8)を、高低差、給水管・給水用具・ポンプユニットの圧力損失、末端最高位の給水用具を使用するために必要な圧力を合計し、配水管の水圧を引いて求めています。このアプリは、式①にその考え方を合わせた次の式で計算します。
全揚程 = 実揚程
+ 配管の摩擦損失水頭(直管 + 継手・弁の相当長)
+ 吐出し速度水頭(v² ÷ 2g)
+ 末端の必要圧力の水頭
+ 器具・機器の損失水頭
− 吸込み側の圧力の水頭
受水槽から高置水槽へ揚げるポンプのように、水槽から吸い込んで水槽へ吐き出すときは、末端の必要圧力・器具と機器の損失・吸込み側の圧力を空欄にします。そのときの式は①と同じです。
各項の求め方
- 実揚程: 吐出し水位から吸込み水位を引いた高さです。ポンプを置く高さは関係ありません。J-Net21 の例では、ポンプから 6.6 m の高さで吐き出していても、水位の差の 1.1 m が実揚程です。
- 配管の摩擦損失水頭: 管の実内径と流量と長さから、口径 50mm 以下はウエストン公式、口径 75mm 以上はヘーゼン・ウイリアムス公式で求めます(八千代市の指針)。継手・弁は、同じ損失になる直管の長さ(相当長)にして直管の長さに加えます。
- 吐出し速度水頭: 管内の平均流速 v から v² ÷ 2g で求めます。g は重力の加速度 9.8 m/s² です。
- 圧力の水頭: 圧力を水の単位体積重量 9.8 kN/m³ で割ります。0.1 MPa は 10.2 m です。
例(受水槽から高置水槽へ揚げる)
実揚程 20 m・流量 600 L/min・管の実内径 80 mm・直管 60 m・継手と弁の相当長 20 m(新しい鋳鉄管 C=130)のとき、各項は次のとおりです。
| 項 | 水頭 |
|---|---|
| 実揚程 | 20.00 m |
| 配管の摩擦損失水頭(ヘーゼン・ウイリアムス公式・管 80 m) | 4.59 m |
| 吐出し速度水頭(流速 1.99 m/s) | 0.20 m |
| 全揚程 | 24.80 m |
この例では全揚程の大部分が実揚程で、摩擦損失は管が細いほど、流量が多いほど大きくなります。計算の手順は「ポンプの揚程の計算例」に書きました。