水深が管径より低いときは、中心角から流水断面積と潤辺長を求めます。
管の中の水が管の上まで届いていないとき、流水の断面は円の一部(水面の弦より下の部分)になります。アロン化成の技術資料は、マニング式の流水の断面積と潤辺長を、水面の弦が切る中心角 θ で次のように書いています。
水深 h(管底から水面までの高さ)と中心角 θ は、円の中心から水面までの距離が d ÷ 2 − h であることから、θ = 2 × arccos(1 − 2h ÷ d) の関係です。水深が管径と同じ(h = d)なら θ = 2π で満流、水深が管径の半分なら θ = π で、断面積も潤辺長も満流のちょうど半分です。
例 内径 200 mm・勾配 10 ‰・n = 0.013・水深 160 mm
- θ = 2 × arccos(1 − 2 × h ÷ d) = 2 × arccos(1 − 2 × 0.16 ÷ 0.2) = 4.4286 rad(253.7°)
- A = (θ − sin θ) × d² ÷ 8 = (4.4286 − sin 4.4286) × 0.2² ÷ 8 = 0.02694 m²
- P = θ × d ÷ 2 = 4.4286 × 0.2 ÷ 2 = 0.4429 m
- R = A ÷ P = 0.02694 ÷ 0.4429 = 0.06084 m
- V = 1 ÷ 0.013 × 0.06084^(2/3) × 0.01^(1/2) = 1.190 m/s
- Q = A × V = 0.02694 × 1.190 = 0.0321 m³/s(32.1 L/s)
- 満流に対する比: 流量 97.7 %・流速 114.0 %
満流は流速 1.044 m/s・流量 0.0328 m³/s なので、水深 160 mm(水深比 80 %)では、流量は満流より少なく、流速は満流より速くなります。
水理特性曲線(満流に対する比)
長野県土木事業設計基準は、粗度係数 n を一定と仮定した円形管の水理特性曲線(図3.1.1)を示し、「流速は水深がほぼ81%のとき最大となり、流量は水深がほぼ93%のとき最大になる」としています。同じ式で、水深比ごとの満流に対する比を計算すると次のとおりです(比をとると n と勾配は消えるので、管径・勾配・粗度係数によらず同じ比です)。
| 水深比 | Q ÷ Qfull | V ÷ Vfull | A ÷ Afull | R ÷ Rfull | θ(rad) |
|---|---|---|---|---|---|
| 10 % | 2.1 % | 40.1 % | 5.2 % | 25.4 % | 1.2870 |
| 20 % | 8.8 % | 61.5 % | 14.2 % | 48.2 % | 1.8546 |
| 30 % | 19.6 % | 77.6 % | 25.2 % | 68.4 % | 2.3186 |
| 40 % | 33.7 % | 90.2 % | 37.4 % | 85.7 % | 2.7389 |
| 50 % | 50.0 % | 100.0 % | 50.0 % | 100.0 % | 3.1416 |
| 60 % | 67.2 % | 107.2 % | 62.6 % | 111.1 % | 3.5443 |
| 70 % | 83.7 % | 112.0 % | 74.8 % | 118.5 % | 3.9646 |
| 80 % | 97.7 % | 114.0 % | 85.8 % | 121.7 % | 4.4286 |
| 90 % | 106.6 % | 112.4 % | 94.8 % | 119.2 % | 4.9962 |
| 100 % | 100.0 % | 100.0 % | 100.0 % | 100.0 % | 6.2832 |
0.1 % 刻みで探すと、流速は水深比 81.3 % で満流の 114.0 %、流量は水深比 93.8 % で満流の 107.6 % が最大です。水深比 50 % では、流量は満流の 50.0 %、流速は満流と同じ 100.0 % です。長野県の基準の図3.1.5 も、n を一定とした場合は満流時の 50 % の流量に対して流速が 100 %、水深が 50 % になるとしています。
満流で断面を決める理由
水深がほぼ93 % のときの流量は満流より多いのに、長野県土木事業設計基準は、円形管は満流、く形きょは水深を内のり高さの9割、馬てい形きょは8割として、所定の計画流量を流すのに十分な断面の大きさを定めるとしています。「この条件の場合が最大流量ではないが、安全を考えて、この条件で断面の大きさを定める」と書いています。町田市公共下水道設置基準も、円形管は満管で排水可能な断面とするとしています。
粗度係数は水深で変わる
実際の粗度係数 n は水深とともに変化します。長野県の基準の図3.1.5 は、n を変数とした場合、満流時の 50 % の流量のときの流速は 86 %、水深は 57 % になるとしています。このアプリは n を水深によらず一定として計算します。満流の半分の流量のときは、n を変数とした場合より流速を速く、水深を浅く見積もることになります。