合理式は、流出係数・降雨強度・面積の積からピーク流量を求める式です。
流出係数・降雨強度・面積から合理式でピーク流量
合理式(ラショナル式)は、流出係数・降雨強度・面積の積から、雨水のピーク流量を求める式です。岩手県治山事業技術細則は「最大洪水流量の算出は、原則として合理式法(ラショナル法)によるものとする」とし、中部地方整備局の砂防施設設計要領は、上流にダム等の洪水調節施設計画の無い河川で、流域面積が比較的小さく、流域に貯留現象が無い(考慮する必要が無い)河川では、一般に合理式法によって清水流量を求めるとしています。
- Q: 最大洪水流量(m³/s)
- f: 流出係数
- r: 洪水到達時間内の雨量強度(mm/h)
- A: 集水面積(ha)
記号と単位は、岩手県治山事業技術細則 7-5 の式(7.5.1)の字のとおりです。流出係数は、土地の区分(森林・宅地・道路など)ごとの基準の表から選びます。区分が混ざる流域では、面積による加重平均で1つの値にします(「流出係数の計算方法」)。降雨強度は、洪水到達時間を地域の降雨強度式に代入して求めます(「降雨強度と洪水到達時間」)。
面積の単位と式の形(1/360・1/3.6・÷10,000)
同じ合理式でも、面積の単位によって係数が替わります。
| 面積 | 式 | 書いている資料 |
|---|---|---|
| ha | Q = 1/360 × f × r × A | 岩手県治山事業技術細則 式 7.5.1・八千代市雨水流出抑制指針 |
| km² | Q = 1/3.6 × fp × r × A | 中部地方整備局 砂防施設設計要領 式 2.1.1 |
| m² | Q = (1 ÷ 360) × F × R × (A ÷ 10,000) | 特定都市河川浸水被害対策法施行規則 第20条 |
360 は単位の換算から来る数です。1 mm/h の雨が 1 ha(10,000 m²)に降ると、1 時間に 0.001 m × 10,000 m² = 10 m³ で、1 秒当たりでは 10 ÷ 3,600 = 1/360 m³/s です。1 km² は 100 ha なので 100/360 = 1/3.6、m² は 10,000 で割って ha にしてから 1/360 を掛けます。高知県の重点地域における許可制度の手引も、降雨強度 60 mm/h を 0.1667 m³/sec・ha(60 ÷ 360)としています。
同じ流域(流出係数 0.45・降雨強度 80.4 mm/h・100 ha)を3つの単位で入力すると、Q は同じです。
| 面積 | 式 | Q |
|---|---|---|
| 100 ha | Q = 1/360 × f × r × A | 10.05 m³/s |
| 1 km² | Q = 1/3.6 × f × r × A | 10.05 m³/s |
| 1,000,000 m² | Q = 1/360 × f × r × (A ÷ 10,000) | 10.05 m³/s |
資料ごとの記号と名前
同じ式でも、資料によって記号と名前が違います。計算の中身は同じです。
- 岩手県治山事業技術細則: Q 最大洪水流量(㎥/sec)・f 流出係数・r 洪水到達時間内の雨量強度(mm/h)・A 集水面積(ha)
- 中部地方整備局 砂防施設設計要領: QP 清水流量(合理式によるピーク流量・m³/s)・fp ピーク流出係数・r 洪水到達時間内の平均雨量強度(mm/h)・A 流域面積(km²)
- 特定都市河川浸水被害対策法施行規則 第20条: Q 行為区域からの流出雨水量(m³/s)・F 行為区域の平均流出係数・R 基準降雨における洪水到達時間内平均降雨強度値(mm/h)・A 行為区域の面積(m²)
- 八千代市雨水流出抑制指針: Q 雨水量(m³/sec)・C 流出係数・I 降雨強度(mm/h)・A 排水面積(ha)
有効雨量強度 re で書く形
中部地方整備局の要領の式 2.1.1 は、Q = 1/3.6 × fp × r × A = 1/3.6 × re × A とも書き、re を降雨継続時間内の平均有効雨量強度(= fp × r)としています。流出係数 0.45・降雨強度 80.4 mm/h なら re = 36.18 mm/h で、1 km² の流域では Q = 1/3.6 × 36.18 × 1 = 10.05 m³/s です。
合理式を使う範囲
岩手県治山事業技術細則 7-5 は、流域面積が大きい場合(流域面積 200 km² 以上)、または流出量の時間変化(ハイドログラフ)も必要な場合には、流域の状況によって単位図法、貯留関数法等を用いることが適当であるとしています。同細則 3-7-4 も、最大洪水流量の算出において貯留現象を考慮する必要がある場合は、単位図法、貯留関数法等によるとしています。計算の画面は、面積が 200 km² 以上のときにその旨を表示します。
特定都市河川浸水被害対策法施行規則 第20条第2項第1号は、雨水浸透阻害行為が行われる前の流出雨水量の最大値を、基準降雨が生じた場合の十分ごとの行為区域からの流出雨水量をこの式で求めた値のうち、最大の値としています。この式の洪水到達時間は十分とされています。
計算結果の丸め
岩手県治山事業技術細則 3-7-4 は、最大洪水流量 Q を「小数第3位四捨五入2位止め」としています。高知県の手引の計算例は、計画雨水流量を小数3位(4位四捨五入)、流出係数と流域面積を小数2位(3位四捨五入)で書いています。このアプリは Q を、1 m³/s 以上は小数2位(小数第3位を四捨五入)、1 m³/s 未満は有効数字3桁で表示し、計算は丸めずに行います。たとえば 1/360 × 0.9 × 67 × 6 = 1.005 は 1.01 m³/s と表示します。
出典
- 岩手県農林水産部森林保全課「岩手県治山事業技術細則(総則・渓間工編)」(令和5年9月改定)7-5 洪水流出量の計算(式 7.5.1・表-1・表-2)・3-7-4・計算例-1
- 国土交通省 中部地方整備局「砂防施設設計要領」(令和2年3月)第5編 第2章 掃流区域における計画対象流量(式 2.1.1・表 2-2-1・洪水到達時間・平均雨量強度)
- 特定都市河川浸水被害対策法施行規則(平成16年国土交通省令第64号)第20条(e-Gov 法令検索)
- 八千代市「八千代市雨水流出抑制指針(公共下水道編)」計算方法 (1) 流出係数Cの算定・(2) 雨水量の算定・(6) オリフィスの吐口断面積の算定
- 高知県 林業振興・環境部 自然共生課「重点地域における許可制度の手引(令和3年4月改訂)」第9章 設計計算例(沈砂池・排水施設)
流出係数・降雨強度・面積から合理式でピーク流量